Chapter 1-4
そう、二人はいわゆる両想いというやつだった。
だから二人の気持ちは、彼や彼女を取り巻く一方通行の好意とは訳が違う。
二人が添い遂げてくれる事を僕は心の底から望んでいるのだが、話はそう簡単ではない。
当人たちが相手からの好意に全く気付いていないのだ。
どころか、全く以って性質の悪い勘違いをしていた。
「でもいいよな、シンは。いつも三峰さんと一之瀬さんが近くにいて。ハーレムじゃん」
「いいなぁ、真綾は。いつも冴木君と赤西君が近くにいて。逆ハーレム?」
「慎之介、突然だが私は今、頭痛が痛くてな……」
「日本語がおかしくなるレベルとは同情するよ。かくいう僕も同じでね……」
ご覧の通りだ。
この二人、互いの想い人が、僕と三峰の事をそれぞれ好きなのだと思っている。しかもさり気なく、僕と三峰が互いの事を好きだという大前提が確立している所が、尚更性質が悪い。
ちなみに僕と三峰が許嫁であるという事は、歩と一之瀬君も知らない。言ったら勘違いが全力全開でアクセラレーションするので絶対に言えないが。
逆を言えば、それを知らないでどうしてそんな勘違いをしてしまっているのか。
「だってお前ら、いっつも一緒にいるじゃん」
「だって真綾と冴木君、いつも一緒にいるんだもん」
「ほうりいしっと! おうまいごっど!」
「落ち着け三峰! 僕だっていっそ壊れてしまいたい!」
それからしばらくの間、お互いに距離を取ろうという事になったが、
「シン、辛いなら言ってくれよ? 相談なら乗るぜ?」
「真綾、言いたい事があったらいつでも言ってね? 話だけでも聞くから」
と、いつになく深刻な表情で心配されたので、すぐにやめた。
誰のせいだと思ってるんだ、誰の。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます