Chapter 1-3
「いやほんと、最後決めれたのはシンのおかげだよ」
「当然さ! なんと言ってもアシストしたのは僕なんだからね!」
「ははーっ。ありがたやありがたやー」
下校の道すがら、隣に並ぶ歩が賛辞を送ってくれる。
うーん、この感じ。これを求めていたんだよね、僕は。
「二人とも凄かったんだね! 見たかったなぁ。バスケとバレーの決勝が同じ時間じゃなかったらよかったのに……」
後ろを歩く一之瀬君が、心底残念そうに肩を落とす。だが、彼女が観たかったのは、僕よりも歩だろう。何故なら、一之瀬伊月は赤西歩の事が好きだからだ。
「早く終わらせて応援に行こうとしていたのだけれどね。結局、試合終了はほぼ同時刻になってしまったのさ」
一之瀬君の隣で、三峰が補足してくれた。
所詮は学校の球技大会。試合時間は短く、勝てば勝つほど回数は多い。応援したいクラスメイトの試合を観に行くのは、優勝を狙っていればいるだけ難しい。
特にバスケやバレーは、終わったらすぐに次の試合、なんて事もザラだったので、同じクラスの試合どころかコートから抜ける事すらほとんどできなかった。
「そうなんだよなぁ。いやぁ、俺らも一之瀬さんと三峰さんの試合、観に行きたかった」
「いや、僕は別にそうでも――」
「行きたかったよなぁ?」
「うん、そうだね本当に残念だったよ! でもお互いに優勝の懸かった大事な試合、手を抜く訳にはいかないからね!」
俺ら、と歩が僕も一緒くたにして言うので、自分の試合に夢中だった僕はそうでもないと訂正しようと思ったのだけれど、歩がやたら怖い顔で同意を求めて来たので僕は思わず全面降伏してしまった。
彼が怒ると怖いのを一番よく知っているのは、僕なんだ。まあ、だからと言って今のが本気で怒ったとかそういう訳では全くないのだけれど。なんと言うか、長い付き合いの中で染み付いた条件反射みたいなものである。
特に最近では、一之瀬君の事となるとやたら怖い。こいつのいない所で一之瀬君と一緒にいるのを見られたりすると、「後で殺す。いや今ここで殺す」オーラをガンガンぶつけられるので細心の注意を払わなければならない。
何を隠そう、赤西歩は一之瀬伊月の事が好きなのだ。
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