昨日見た夢・つれづれ短編集

ましさかはぶ子

86 アグリーセーター - ホノボノ -




クリスマスにダサいセーターを着るイベントがある。


田舎のおばあちゃんが孫のために編んだ

クリスマスのプレゼント用のセーターは

どことなくダサいと言う話から、

クリスマスにそんなセーターを着てパーティーをするのだ。


「セーターって一着編むのに結構日にちかかるよ。

しかも編み込みとなると糸を揃えたりしなきゃならないし、

お金も手間もものすごくかかるのに、

普段着には出来なくて着るのはその時だけって、

もったいなさすぎる。」


母は私を見た。


「だから編みたくない。

しかもおばあちゃんって、どういうこと?

私がおばあちゃん?」


母は少し怒った様に言った。


「えー、でも友達と約束したし。

お母さん編み物得意でしょ?」

「あんたが糸代と手間賃を出しても絶対に編まない。

一回きりのセーターなんて絶対に嫌。

ちゃんとしたセーターなら編んでもいいけど。」


私は困ったと思った。

しばらく黙り込んでいると母は言った。


「じゃあ自分で編みなよ、教えるよ。」

「え、い、イヤだ。面倒だもん。」

「じゃあどうするの?どこかで買うの?」


購入するにもお金がない。

それにそんなちょっと特殊なセーターは高い。

母は編み物をするから毛糸はたくさんある。

それで編んでもらえば安上がりだと思ったが、

魂胆は外れた。


母はそれをもう見抜いていたのだろう。

にやにやしながら私を見た。


「自分で編みなよ。

それでちょっと変な人形を作って

セーターにつければいいんじゃない?」


母は私を見て言った。


「編み込みじゃなくていいの?」

「出来ないでしょ?

それにつけるだけなら人形を取れば

そのセーターは普段も着られるし。」


と言う事で私はセーターを編むことになった。


最初は手間取ったが、

普段母が編んでいるのを見ていた。

なのでなんとなく指が動く。


「案外とうまいじゃない。」


直線デザインのセーターだ。

簡単なものだ。

そして母が上手いと褒める。

おだてられている感じはしたが気分はいい。


毎日コツコツと編んでいたら

セーターは思ったより早く出来た。

だが所々編み目はガタガタだ。

そして母は知らぬうちに変な形の

小さなあみぐるみを作っていた。


「それの後ろに安全ピンをつけて

セーターにくっつけれぱごまかせるでしょ?」

「お母さん、ホント好き!」


と私も母をおだててみた。

まんざらではない顔をしている。


そして無事パーティーにはそれを着て出た。


だが実際は皆は普通の服だったりで、

別にこだわる必要はなかったようだ。

まあだいたいそんなものだろう。


友達には母が作った変なあみぐるみが評判で

欲しいという友達にあげてしまった。


「黙ってあげてごめん。」


だが母は笑った。


「可愛いって言ってくれたんでしょ?

受けたんならいいよ。」


私はほっとした。


「ところであんた、今度は何を編むの?」

「え、編むって。」

「せっかく編み始めたからまた何か欲しいでしょ?

教えるよ。」

「えーーー、」

「あの変なあみぐるみ編みたくない?」

「うーん、」

「すぐ出来るからさ。

それにあんた筋はいいと思うよ。」


私を編み物の沼に引きずり込みたいのだろう。


「かぎ針で編んだの?」

「そうそう、出来たらまた友達にあげなよ。」


母は奥から糸とかぎ針を出して来た。

私はそれを受け取り編み始めた。


母は嬉しそうだ。


私はそれを見て親子で同じ趣味もいいかもと思った。





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