昨日見た夢・つれづれ短編集

ましさかはぶ子

82 13階段 – モヤモヤ -



中学生の時に大っ嫌いな奴がいてさ、

俺を虐めるんだよ。

ムカついていたんだけど俺もヘタレで

へらへらしてるだけだったんだ。

なんか俺って影が薄くてお化けみたいなんだと。


昔学校からキャンプに行った時に、

夜は案の定怪談話になってさ、

俺はある話をしたんだ。


「階段だけどさ、上る時は数えると14段だけど

下る時は13段なんだぜ。

それで絞首刑の階段も13段なんだよ。

だからその13段目を踏むと呪いにかかるってさ。

今までやったことの報いが来るってよ。

……13階段の呪いだよ。」


もうすでに消灯時間は過ぎてて、

誰かが持ってきた懐中電灯を囲んで

こそこそと話していたんだ。


みんなはキャンプなんてした事ないし、

テントの外はマジ真っ暗でシーンと静まり返っているし、

渡された毛布も黴臭い。

そして普段から影の薄い俺が雰囲気満タンでぼそぼそしゃべるからさ、

みんな黙り込んじゃって。


おもしれーと思った瞬間、

テントのすぐそばで鳥がでかい声で鳴いたんだよ。

みんなもだが俺も心臓がバクバクして飛び上がったね。

そしてすぐに先生が顔を出して、


「いい加減に寝ろ!」


と怒鳴られたんだ。




それからしばらくして俺を虐めていた奴の一人が

階段から足を踏み外して足首を骨折したんだよ。

13段目を踏まないようにして飛び降りたら骨折だと。

カルシウム摂れよ、はははって話だ。

あいつ牛乳嫌いだったからな。


そして俺はそれから虐められなくなった。

多分あの話が効いたんだろうな。

結果オーライだ。




それで、ま、どうして俺が今ここにいるかって言うと、

階段でなく人生踏み外しちまったんだよ。

アホな事したな。


俺、どんくさいと言われていたけど

計画して進めるのが上手いんだよ。

だからいろいろと指示してた。

褒められたから嬉しかったよ。


でも本当はそういうのちゃんとした仕事で

出来ればよかったんだよなあ。


今階段上ってるんだ。13段だ。

でもな、上りで13なら下りは12だ。

最後の一段を数えるかどうかで変わるんだ。

13階段の呪いなんて大嘘だよ。


まあお前らは人生の階段踏み外すなよ。

そっちはどこを踏み外してもどえらい事になるからな。


じゃあな、あばよ。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る