訳あり美少女と友達になる話

さーお

第1話

「ねえ…斎宮くん…ちょっといいかな?」


本来かかわることのない、クラスの陽キャグループの前原京が話しかけてきた。なぜ話しかけられたか、理由は、一つしかない…「あのこと」だ──


斎宮という名前を聞けばある人は首をかしげ、ある人は、「あの印象の薄い人ね」と言うだろう。そう、つまり陰キャである。高校2年生になった今でもクラスの輪に入ることが出来なかった。

友達と言って初めに思いつくものはネッ友だし、好きな人と言えば2次元にいると答える。

そして、モットーはオタクに誇りを持て。である。

つまり、陰キャなだけでなくオタクでもあるのだ。

この話を聞くと、みんな俺の容姿をこのように想像するだろう。太っていて髪が、汗にまみれているあの姿を。だか、そういうわけでもなく、適度に運動はしているので、体は軽く引き締まってはいる。

別にそこで陰キャオタクを補おうとしている訳では無いぞ?

たぶんそうだ。うん、そういうことにしよう。



数時間前に戻る


「先生、頭が痛いので保健室に行ってきていいですか?」


(まあ、次が体育だからいっか)

3時間目の国語から、頭痛がしてきた俺は先生に断りを入れ保健室に向かった。

ちょうど体育は苦手教科で、ただ恥をかくだけだから、半分さぼりである。


「京くん…あのね、実は、京君のこと好きだったんだ、つ、付き合ってくれないかな…?」


保健室に入ろうとした瞬間、そんな声が聞こえてきた。

(何を見せつけられてるんだ…?)

別に見せられているわけではないが、なぜかこっちまで照れくさくなる気持ちと、もてオーラ前回の京に少し苛立った気持ちが入り混じる。この苛立ちをどこで晴らそうか。

(っと…早く隠れないと出てきてしまう)

保健室から離れようと背を向けると後ろから、「ごめん、その気持ちにはこたえられない…」という声が聞こえてきた。多分告白されたのはこの一回だけではないだろう。


少し長い髪に整った顔立ち。少し小柄なその容姿はどこか、中性的な面影を感じさせる。クラスでは実行委員や委員長など行事に率先して取り組む姿はさぞ女子の目には輝いて見えただろう。いや、男の俺ですら惚れそうになるが。

掃除ロッカーの陰に隠れると足音がしたので多分、二人は出て行ったのだろう。保健室で告白しているあたり、先生はいないだろうが、ベットは使うことができるので、とりあえず寝ておこう。


「失礼しまーす」


(保健室ってなぜか誰もいなくてもあいさつしちゃうんだよな)

などと、くだらないことを考えていると、目の前で絶賛着替え途中の美少女と目が合った。

「~~~~っ!?!?」


到底想像できないこの状況を理解する前に、声にならない声が保健室いっぱいに響いた。

一旦着替えてもらい、冷静になった俺は状況を理解し相手が誰なのかがわかってしまった。見た目は違うが、顔や、身長など容姿が京と一致していたのである。


「さすがにばれちゃってるよね」

「う、うん…」

「あ、あのさ…一つお願いがあるんだけどさ─」


キーンコーンカーンコーン

京の話を遮るように、チャイムが鳴った。

「やっば、これでも優等生としてやってるんだ、先に授業に向かうよ!ごめんね」

すると京は焦ったように保健室を出て行った。

(にしても、スタイル良かったなぁ)


そして今に至る。

現在は放課後京も俺もどちらも部活はしていないので、放課後の時間は有り余ってる。いつもだったら、「あー今日はどのボス周回しようかなー」などと馬鹿な考えているはずだが、緊張でそんなことを考えていられる余裕はなくなってしまった。


「ねえ…斎宮くん…ちょっといいかな?」


京が話しかけてきたと同時に、クラスメイトが少しざわついた。

そりゃそうだ、クラスの陽キャ代表とも言える京が陰キャ代表の斎宮に話しかけて来たのだから。





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