片割れの聖剣、一対の魔剣
灰猫
第1話 誕生する魔剣、随伴する聖剣
赤子の産声は、ざわめきと困惑の中で響き渡った。
それは少年が生まれ持って当然の浅黒い肌を持たず、かと言って敵対する者達が持つ白い肌をしている訳でも無いのだから仕方がない事だろう。
生まれたばかりの赤子、まだ頭髪は薄いが薄っすらと生えたソレの色は敵対する者達が持つ黒の色をしている。赤子の母は身元の確かな娘であり、父である夫とも将来は戦士団を率いる団長にと期待されている好青年。両者とも間違いなく同族の出であり、この様な見た事のない肌色の赤子が産まれる訳が無かった。
「なんという…」
「この髪の色は、奴らと同じだ」
「しかし、アイツらはここまで攻め入った事はないだろう?」
「母親が暴漢に襲われた事実もないのだぞ」
産後の疲れからか産み落とした我が子を見る事となく、意識を手放した母親の傍で女衆を纏める老婆が重々しく口を開いた。
「忌子じゃ」
思わず産婆達がゴクリと喉を鳴らした。
「アヴァにこの赤子を育てさせるわけにはいかぬ…子の誕生を心待ちにしておった二人には辛いじゃろうが…」
老婆は泣き崩れるアヴァの姿を幻視し、身を固くする。
「この子は森で育てる他の者達には死産と伝えよ」
赤子を抱き上げ、囁くように告げる。
「感傷に過ぎんが、せめてこの名を送ろう…」
テオドシウスと。
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