星紡綴身ステラマクス

渡士 愉雨(わたし ゆう)

プロローグ・クライマックス1



 満天の星空の下、二つの存在が向かい合っていた。


 白と黒。


 輝きと影。


 女と男。


 美しさと禍々しさ。


 肯定と否定。


 その二つを、二人を例える対照は幾つもあり、どれもが正しかったが、関係を表現しきるにはどれも足りなかった。


 明確に共通している事は、唯二つ。


 一つは自身の身体よりも歪に大きな、巨人さながらの腕を右腕に『纏って』いる事と。


 今この時互いが戦わなければならない理由であった。


「どうして、こうなってしまったんだろうね」


 白い、御伽噺の英雄、子供達が憧れるヒーロー、そんな姿の女が、超人が呟いた。

 両肩から伸びる白いマフラーを風に棚引かせ、悲しげに、自嘲的に。


「それは、譲れないものが互いにあるから」


 黒い、英雄の敵対者、ヒーローと対峙する好敵手、あるいは悪役、そんな姿の男が、超人が答えた。

 両肩から伸びる黒いマフラーを風に棚引かせ、悲しげに、挑戦的に。


「……もう、避けられないんだね」

「ああ、避けちゃいけないんだ」


 男の強い意志の込められた言葉に、女は息を吐いた。

 諦め、苦しさ、痛み、そして高揚。様々なものを込めて。


「なら、時間もないし、早く終わらせないとね」


 廃墟と化した街の中心で。


「うん、終わらせよう」


 二人の超人は意を決する。


「私達の」

「皆の」

『わがままの時間を』


 儚くも強い決意の下に、アスファルトの大地を蹴り潰し砕き蹴って、巨腕たる拳を、戦う意思を振り上げる。


 そんな超人二人の激突は、輝きを放つ。


 夜空の星々に負けまいと、地上に星座を描くように、煌めいていた。


 その背に、ヒトの、世界の、彼ら自身の命運を、運命を背負いながら。


 戦いの果てに待つものが、涙だと、互いに知りながら……それでも拳を握る他ない事を、二人は知っていた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 ――その果てに……一つの光が、散った。

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