第16話 苺のラブレター

お風呂の事件から数日が経って廊下でヘラヘラと笑っていた3人組は脱衣所ののぞきの疑いを掛けられ|謹慎≪キンシン≫処分となった。

リーファの方は少し元気を取り戻してきたようで 最近はナースのおばちゃんたちと話をするのが楽しみだと言っていたな。

病室のドアの前に行くと 楽し気な声が聞こえてくる。


「・・・そうなのよ。うちの旦那ったらぁ~ 若い子が好きでしょ?すぐに飲みに行っちゃうのよ」


「浮気 よくない。そういうとき 腕の骨 こうやって ボキってやるといい」


「そうなのよぉ~よくないのよ。だけど 私が介抱しなくちゃいけなくなるのもめんどくさいわ がはは」


「好きな人 一緒に暮らせるようになる いい」


「まあ リーファちゃんったら若いのねぇ~ こっちまで恥ずかしくなっちゃう がはは」


ガラガラガラ


ドアを開けるとそこには大人びたショートヘアーで無邪気に笑うリーファの姿があった。

「あらあら リーファちゃんの旦那さんが来たみたいだからおばさんはもう行くわね

また相談に乗ってもらうわ。楽しかった がはは」


おばさんがベッドから立ち上がると 超重量のかかっていたベッドが音を立ててきしみを元に戻す。

今度はドスドスと音を立て近づいてくるとギョロギョロとした目で 値踏ネブみをするようになめ回すし「フン!」と声を上げて出て行ってしまった。


ゴホゴホ


「トシユキ 来てくれてありがとう ゴホゴホ・・」


「病院の暮らしはリーファには退屈じゃないか?」


「そうでもない。恋愛相談に来る人多くて大変。あの人も可哀そうな人だから 知恵 授けてた」


「リーファは大活躍だな」


「えへへ」


もう 病室へは何度立ち寄っただろうか?

医者からは順調に回復をしているという話をされるだけで退院の話がでてこない。

スクールに4人で通える日が来るのが待ち遠しかった。

お見舞いが終わって自分の部屋に入ると机の上に白い封筒が置かれている。


「ラブレタ??」


手紙の中身を出してみると苺の色と香りのする便せんが出てきた。

手紙にはこう書かれている。


「あなたと二人きりでお話がしたいのれす。

・・・・・絶対に 一人で来てほしいのれす。

私は とんがり帽子をかぶっているのですぐにわかるはずれす」


満月の夜に大書庫まで一人で来てほしいという内容だった。

イタズラだとしてもお風呂の件の3人組は外出禁止中だし

文字は女が書いた文字に間違いはない。

満月の夜と言えば 今晩じゃないか。。

俺の脳裏に 星のラクダに乗ってリーファと移動したときの光景がよみ

あの頃に戻りたいと思った。


手紙をテーブルに置いて夕飯も食べずにジーっと眺めていると

徐々に日の光が手紙を照らすことが出来なくなった。

そして月の明かりが手紙を照らし始めてようやく決心がついた。


「大書庫へ行こう」


石造りの大書庫は大きな円形の建物で大量の本がところ狭しと置かれていた。

天井は円形の大きな窓になっており 月の光が大書庫の中を照らしていた。

建物の中央を見ると 人がいる。

スポットライトのように照らされているその人は苺のとんがり帽子をかぶった小さな女の子だった。


「あの子は同じクラスの子だ・・」


近寄ると彼女は帽子を持ち上げて月明かりで爛々と光ったひとみをこちらへ向けると

決意をしたように口を開いた。


「あなたが ほしいれす・・・」


突然の告白に俺の顔はほてりに火照って息をするのを忘れたときのように

心臓の鼓動が高鳴ってきた。

魔法少女の全力の魔法は俺の体に抜群の効果を与えた。

だけど 伝えなくちゃいけない。


「俺はキミの気持ちには答えられない。今はそんな気持ちになれる状況じゃないんだ」


少女はうつむくととんがり帽子を両手に持った。


「いいんですか? これを見てもそんなことが言えますれすか?」


少女は帽子の中から 布を一枚取り出した。

よく見るとそれは見覚えのある布だった。


「俺のパンツじゃないか!」


あのとき脱衣所には俺のパンツがあったんだ。

騒ぎの後で回収に行ったけど 

どこにもないから捨てられてしまったと思ってた。

まさか、あの子が持っていたなんて。 

少女を掲げるとほくそ笑んだ。


「こないだの脱衣所の事件れす。

あの3人のほかにもっと凶悪な真犯人が見つかったと言って

みんなの前で防犯のために飼っているデスドーベルマンにこのおパンツを嗅がせてみましょうか?

あなたの股間は女の子になっちゃうのれす ぷぷぷ」


少女は口を開くたびに自信を増しそして勝利を確信するに至ったようだ。

こうなったらやるしかない。

俺は ニンニクマンに変身をする。


「ニンニクマン!! とぉ~!」


驚くかと思っていたけど少女は意外と驚かない。

それどころか余裕の表情にも見える。


「その姿をまっていたのれす。早く サンプルが欲しいのれす!」


少女には悪いが実力行使をするしかない。

小さなオナラでデバフ効果を付与してその隙にパンツを取り返す!

「悪く思うな。俺のパンツを返してもらうだけだから!ぶぶぶ~」


少女の方へお尻を向けて小さなオナラを噴射した

だが少女はとんがり帽子をこちらに向けて

ラッパのように息を吹き込んだ

「包み込め! マジカルシャボンなのれす!!!」


帽子から大きなシャボン玉が飛び出すとオナラはシャボン玉の中へ閉じ込められてしまった。

あっけにとられていると少女はこちらへ近づいてくる。


そして持っていたパンツを差し出した。

「サンプル ありがとうれす。研究に使わせてもらうれすね」

「研究だって? 告白じゃないのか」


「告白?ぷぷぷ。そうだ自己紹介がまだれした。私の名前は イチゴ。イチゴ研究班の会長なのれす」


どうしてもニンニクマンのオナラを調べたくて何度も話しかけてみようとしたけど

タイミングが悪くて話しかけれずに手紙を書いたという事だった。


「よろしくなのれす」


こうしてニンニクマンのデバフ効果は研究されることになったのでした。

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