第14話 炎のフレイムマン

出発の刻限コクゲンは遅れてしまったが満月が登りかけた頃にバレルの街を目指して出発をした。

登る満月を見ながら星のラクダという特別なラクダに乗って夜道を進む。

一見すれば普通のラクダにしか見えないが何か違いがあるのだろうか?

リーファは 「見て!」とラクダの足跡を指をさす。

五角形のヒヅメの跡は星型に光り始めた。


さらに月が登り始めると さらに足跡はハッキリと光始めそのうち進行方向にもラクダの足跡が浮かび始めた。

もしかしすると 昨日誰かが通った星のラクダの足跡かもしれない。


「シルクロードか・・」

「シルクロード?? よくわからないけど でも 奇麗・・」


月の光が沈んで日の光が登り始めた頃にようやく街が見えてきた。

門の入り口にはエルフの転移ポータルが設置されており、干し肉が干されている。


「これは エルフの転移ポータルですか?」


兵士長はあごひげをさすると感心した様子でうなづいた。

「そうだ よく知っているな。おとぎ話と思われているこの転移ポータルだが実は様々な場所に存在している。

この星のラクダも 転移ポータルと関係があるとその昔出会った老エルフが言っていたぞ 以上だ」


ここにも転移ポータルが存在するならもしかすると本物かもしれない。

長老エルフに合うことが出来れば元の世界に戻るヒントも?

期待に胸が躍ってニンニクパワーが体中を駆け巡った。


兵士宿舎に向かうと、早速連絡係の兵士たちが兵士長に状況を報告した。

「ジークが現れただと!」


話によればとある酒場で男たちがケンカを始めたらしい

始めはよくある酒場の光景だったのだが次第にケンカがエスカレートしてくると

男はフレイムマンという魔物を召喚したのだという。

兵士長はあごひげをさすった。

「炎の魔物であるフレイムマンは ジークの召喚する魔物だ。おそらくまだこの街に潜伏をしているだろう。

腕に タトゥーが刻まれているはずだから見間違えることはないはずだ 以上」


俺達も操作に参加をすることになったが猫の手も借りたい状況だったのだろうか?

兵士の中には見習い兵士から 苺のとんがり帽子をかぶったコスプレ少女まで参加している。

「この子も兵士なのかな?」


俺達は若干の支給金を受け取るとぶらぶらと街を探し始めた。

カフェで聞き込みをすれば手掛かりが手に入るなんてドラマみたいなことを

本気で考えて聞き込みをしてみたけど支給金もそうそうに使い果たしてた。


「トシユキよ これからどうするのだ?」


到着したばかりなのだから街の事はわからないし夕方まで探して見つからなければ

今日のところは兵士宿舎に帰るしかないだろう。

そんなとき、とんがり帽子のコスプレ少女を発見した。

「あの子も兵士なんだろ?ちょっと 話しかけてみよう」

アケミは髪をかき上げると ため息をついた

「いいけど、トシユキ逮捕されないでね」

女子の軽蔑の眼差しを感じるけど 俺が何か変な事をしたと言うのか?

もしかして これからするとか思われてるのか?

そうこうしているうちに苺のとんがり帽子は居なくなってしまった。


何の収穫もないまま街の隅にある粉ひき用の小屋の近くまでやってきた。

ミリーが粉ひき小屋が怪しいと言うので 中を調べたけど小麦粉の袋が積まれているだけだ。


「ほらな 特に怪しい場所なんて! ドン!・・え?」


ドン!!ドン!!


倉庫の奥の壁から音がした。

何度か壁を叩いてみると 壁に空洞があるような音が聞こえる。


「ミリー この壁に穴をあけてくれ」


「心得た! スケルトン流ダークブレーカー!!!」


スパン! スパン!


壁がくりぬかれると奥に隠し部屋が現れた。


「隠し部屋か? 税を逃れるために小麦粉の袋を一時的に隠す部屋があると聞いたことがある」


それほど大きな部屋ではなく中も真っ暗な部屋だ。

明かりもつけずに半日もいれば頭が可笑しくなってしまいそうだった。


ボ!ボボボ!!


部屋が明るくなりオレンジの炎の光が部屋を照らした。

「ランタンなんて よく持ってきてたな いいや。リーファか?」


だけど返事をしたのは低い声の男だった。


「よくここがわかったな!こんなところへ入ってきたんだ貴様らは兵士団の関係者だろ?」


部屋の奥から姿を現したのは ジークとフレイムマンだった。


「そんな事より、お前に聞きたい事がある。エルフの長老を襲ったのはお前か?」


「そんなところまで調べがついていたとはさすが 兵士団と言ったところか。

ああ エルフの里を襲ったのは俺達さ。長老の囚われている街も知っているぞ

ある実験のためだそうじゃないか?」


「教えろ!」


「俺を倒せたら教えてやるぜ!がははは そろそろお前たちにはあの世へ行ってもらう事に・・ え!」


ドッカン!


リーファが隙を突いてファイアボールを放ったが

フレイムマンがジークをかばって盾となった。


「がははは 同じ炎属性の攻撃などフレイムマンには毛ほども効かぬは」


ミリーが飛び出すとローブを脱いだ。

「アンデット相手なら 私に任せろ!・・カオスブレード!!!」


炎の魔物のはずなのに ミリーの剣はフレイムマンの物理攻撃をはじいている

斬りかかった攻撃がどのくらいのダメージを与えられているのかはわからないが

確かにフレイムマンに攻撃が入っている

もしかしたら行けるのでは? しかし


「あっちちっち!!」


ミリーが剣を落とした。

金属の剣は 熱を吸収して真っ赤に光を放っていた。


「ミリー 無理をするな」


残るはアケミのセクシーショットによる衝撃波の攻撃か俺がニンニクマンに

変身するしかない。

ただ うまい具合にジークにデバフの負の効果を付与できたとしても フレイムマンはオナラを燃やしてしまうだろうし、やはり アケミのセクシーショットに掛けるしかないか?


「アケミ!! セクシーショットだぁ!」


「ジーク?フレイムマン? どっちに撃ったらいいの?」


「後ろだ! 俺たちが入ってきた小屋の入り口に向かって 精一杯の力で撃て!」


「よくわからないけど 

私がやってあげるわ。セクシーショット!!!」


アケミがセクシーショットを打つと入口は貫通してトンネルのように外が見えた。


「今だ! みんな小屋の外に出るんだ」


ジークが高笑いを始めた

「がははは 逃げるつもりか? 追いかけて一匹ずつ葬ってやろうではないか」


小屋の中からは ミリーとアケミが出てきた。

「私たちだけなのか? それよりアケミよ 小麦粉で真っ白だぞ」


「ミリーも 真っ白じゃない?」


二人は もんもん白い煙を上げる粉ひき小屋の奥へ視線を送った。。


「私 逃げない。トシユキ 逃げて。エルフの長老の場所 聞くまで私 逃げない」


俺は リーファを抱えると 外へ向かって走った。

「作戦なんだ。こっちへ来い」

「作戦?抱きしめないで いやぁ~ん 好き・・」


フレイムマンも追いかけてきた。

ギリギリのタイミングか。。。


俺は小屋の入り口で ニンニクマンに変身をするとオナラをした。

「ニンニクマン!! くらえ!粉じん爆発ぶぶぶ~!!!ミストステータスブレイカー



大気中に待った燃えることのできる粉は可燃性のオナラのガスが混ざり合い

その力を増す

後はそこにフレイムマンが現れれば自身の炎によって引火する。


ドッカン!ドッカン!


吹き飛ばされた俺のお尻は 真っ黒に焦げていて皮をめくると焼きニンニクになっていた。

その後 兵士団がやって来て小屋の中を調べたけどジークの姿はなかったという。

それよりも 大変なことになった。


「リーファ!! 確りしろ リーファ!!」


爆発に巻き込まれても俺の体は元に戻るがあの場に一緒にいたリーファは

抱きかかえられていたと言っても 距離が近かったために爆発の影響を受けているようだった。


リーファが入院をしてから数日が経った。

「ポッポー」

「また ハトか。今日はパンくず用意してきたからやるよ ほら!」


リーファのお見舞いは欠かさないように毎日いっている。

病室に入るといつものように元気なえがををしてくれるけど

その奥には苦痛に耐えて笑っていることが伝わってきた。

「何か食べたいものはないのか?」

「トシユキ 来てくれる それでいい」

そんなとき 部屋に兵士長が入ってきた。

この人はどうして俺の居場所がわかるんだろう??


「ジークを取り逃がしたのは残念だったがお前たちに朗報もある。

今回の功績により兵士スクールへの入学が許可されたのだ。まあ まあ 話を聞け」


兵士スクールとは 兵士の訓練施設の事だ。

通常は 臨時兵士は1年でその雇用契約は終了するのだが

何かしらの成果によっては専属の兵士として雇用契約を結ぶことが出来るようになるらしい。

専属兵士になれる条件はわかってはいないが噂では

・出身地

・肌の色

・犯罪者を捕まえた数

・兵士のタトゥーを入れて忠誠心を見せること

そして 兵士スクールを卒業することがあげられる。

ただ 兵士スクールというのは主に裕福な家の出身が多く

多額の寄付金を集めるための施設と言っても過言ではないそうだ。


だけど 元の世界に戻ろうとしている俺達には何の関係もない。

兵士長にその場で断ろうとすると

病室の外に呼び出された。


「お前、目の下にクマが出来てるぞ。ほら。酒でも飲め」


小さな缶に詰まったウィスキーを手渡して来た。

この世界は子供たちも普通にお酒を飲むようだけど

俺は臭いを嗅いだだけで せき込んでしまって飲まずに返した


「なあ 報告は受けているがお前は凄い力を持っているようだな。

もしかすると お前はそのことで悩んでいるのではないか?」


兵士長と言うだけで偉そうなことを言いたいようだ。

どうせ金の力で兵士スクールを 首席で卒業したエリートとかなんだろ?

腐ったタダの肩書じゃないか?


「俺は この力に悩んでなんかいません。一刻も早く故郷へ帰るためにも

この力を最大限に利用してやろうと思ってます」


兵士長はあごひげをさすった。

「言葉を変えよう。 リーファに怪我をさせてしまった事に責任を感じているのではないか?」


「・・・。」


「何も言えないか がははは。お前はやはり兵士スクールへ通うべきだ。

俺は昔親に言われるがままスクールに入学をして無駄な時間を過ごしたが

だがお前は違う、仲間のためにももっと自分の力を知るべきだと俺は思う。。以上だ」


兵士長は言いたい事をいうと去り俺一人だけになった。

そんな事を言われてしまったら・・・通うしかないだろう。


・・・・・・

「今日は皆さんに編入生を紹介します。トシユキさん・ミリーさん・アケミさんです。みなさん拍手をしてください」


パチパチパチ


クラスメイトを見渡すと 私服の学生の中に貴族っぽい恰好の連中や

魔法使いっぽい恰好の連中までいる。

「あの子は?」

以前 ジークの捜索のときに一緒だった苺とんがり帽子の子もいた。

この子はスクールの生徒だったんだ。

でも なんだろう?

あの子に俺だけをすごい見ている気がする。

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