第11話 鍋パーティー

あの美味しかったサソリの足も残り1本

みんなはまだ 気づいていないようだ。パーティーを組むうえで大切なことに


「ミリーは すごい剣術だな。どこかで習ったのか?」


ミリーは剣のサヤをポンと叩いて見せた


「これか? 田舎では敵がいなくてな。よく戦場跡地へいってスケルトン相手に剣術を磨いたものさ。

なにせ 相手は不死だからな。三日三晩戦闘をしたこともあるぞ」


ずっとアンデットと青春を過ごしていたのか?

イケメンの先輩と剣術試合のつもりがデートに発展していくなんてそんな思い出なかったんだろうな。

男女の色恋の話になると過剰に反応するのか?

13歳の夏で頭の中が止まってるんだ。


「まあ あれだけ動けばお腹も空くだろう。 俺が鍋をよそってやるからお椀を貸してくれ」

「ああ すまんな。」


よし まずは一人


「なあリーファ。リーファの魔法は大活躍だったな。俺が鍋をよそって・・・」


リーファのお椀に手を伸ばそうとしたとき アケミが口を開いた。


「リーファ 私がよそってあげるわ。私って肝心なところでいつも気絶しちゃうのよね。

雲の上に登りたい気持ちになっちゃうの。(トシユキ 気付いているのがあなただけと思ったら大間違いよ。私が本当のお鍋の厳しさを教えてあ・げ・る)」


ニンニクの球根を一緒に食べたせいで俺にだけアケミの心の声が聞こえるようになったけど

アケミのヤツも サソリを狙っていたのか?

みんなに適度に 鍋をよそった後で無邪気な表情で

「あれれれ 足が一本残ってる もったいないから私 食べちゃうね」とか言われたら

鍋をよそってもらって借りが出来ている俺達には もうどうすることも出来ない。

アケミはリーファのお椀によそうとその流れで俺の方にも手を向けてきた。


「トシユキも 私がよそってあげるわ。お鍋はみんなで食べるから楽しいの(みんなが野菜を食べる姿を見れて楽しいわ)


どうする?

このまま アケミにサソリを渡してしまうのか?

「いいや 俺はリーファによそってもらおうかな」


リーファは 両手を突き出してハグでもねだるかのような目をしている

「まかせて 私 よそってあげる」

「よし まかせた。美味しいヤツをよそってくれよ」


美味しいヤツとはつまりサソリの事だ。

リーファがよそってくれたお椀に たまたま サソリが入っていたんじゃ

食べないわけにはいかないだろ?

リーファも好きな人のお椀の世話が出来て幸せそうだ。

スーパーで買い物をする主婦みたいな顔をしている。

そして俺も 最後のサソリを食べられて幸せだ。


俺のお椀を目の前に持ってくるとニッコリとした。

「お口 アーん する。私 食べさせてあげる」


それも悪くない。

最後のサソリを頂こうと 口を開けた。


モグモグ モグモグ ん?


シャリシャリとした触感。

「これは何だ?」

「ケール(キャベツ) 一番おいしいヤツ入れた。気に入ったか?ふふふ」


美味しいよ。美味しいけど・・。

涙が出るほど 美味しいけど・・。本当に涙がでそうだ。


アケミが甘えた声をだした。

「トシユキったら いいな~。 あれれれ 足が一本残ってる もったいないから私 食べちゃうね」


そしてお鍋を食べ終わると 店員がやって来て鍋を片付けてしまった。

まあ 運を味方につけているのもアケミの強さなのかもしれない。

神様はえこひいきし過ぎだよ。


そのとき 店員がお盆をもってやってきた。

「おじや 出来ましたので置かせてくださいね」


最後の最後に 濃厚な感じのおじやがでてきた。


「どうしたんだ アケミ?」

「わたし お腹いっぱい。 トシユキ 食べてくれる?」

「え? いいの?おじやだよ?」


アケミは濃い味のサソリ鍋でお腹がいっぱいになってしまったようだった。

しかもリーファまで。


「私 ケール食べられて 幸せ。おじや ミリー食べて」

「いいのか? すまんな リーファ」


二人のお腹はピークに達していたようで 俺たちが食べ始めると二人は

外の風を浴びに行きたいと言い出して 先に店の外へ出ていった。

ミリーと二人きりになったけど ミリーの顔を見るとニタニタとしたやらしい顔をしているので聞いてみた。

「ミリー どうした?」

「あはははは あの二人 どこ・・いったのかな?」

「風に当たりに行ったんだろ?」

「と・床屋かも あははは 」


おじやを吹き出しそうになった。

きっと スケルトンとの戦いで性の知識を吸われたに違いない。

食事が終わって俺達もお会計を済まて外に出ると

ちょうど二人がこちらへ向かって歩いてきた。


「お帰り。ん? どうしたんだ?」

「道を教えたら これ もらった」


リーファが手に持っていたものは それは魅了の腕輪だった。

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