トラウマ

発達障害を持つトモヒロは、1人で生活はしていけません。父も母も高齢になってきたのでそろそろ施設に預けないといけないのではないか、という議案が家庭内で出ました。

家族で話し合い、トモヒロに合う施設を探して生活をさせようという結果になりましたが、母はその時何も言わず、同意はしたが納得はしていない様子でした。

そんな時、私は子どもを連れて父に会いに行きました。すると、父の目の下に青い痣が出来ていたのです。

「お父さん、それ…」

「お母さんにやられた。お父さんとめぐみとエリがお母さんを陥れようとしている、と。コップを投げ付けてきて馬乗りになって殴ってきた。」

私は子どもは別室で遊ばせ、父と話をしました。

幼い頃からの母の暴力、統一教会のこと、プロミスで無理やり借金をさせられたこと、お小遣いなんてもらったことがなかったということ。

それらは全て父にとっては初耳で、母から聞いたこともないということでした。

丁度その時でした。自民党が統一教会とずぶずぶ、というニュースが世間に知れ渡り、そこから芋づる式に母が教会で何をしてきたかが明らかになったのは。

宗教2世の方や家族を亡くした方がテレビに出ているのを見て、私も何か、この統一教会のせいで受けたネグレクトや多額の献金、借金について発信したくなりました。

母自身の問題も確かに多くあります。統一教会だけのせいではない、だけど統一教会に母が入信したことでの被害もいくつもある。私は意を決してTwitterを始めました。

そこには私と同じような被害にあった2世がたくさん居ました。それだけで私は胸が苦しくなって涙が出そうになりました。

こうしてこのエッセイを書くのも、何かしら形に残しておくといいと言ってくださった方がいらっしゃったのと、冒頭でも述べたように私自身の人生の整理をするためです。

統一教会全般を否定するわけではありません。教会には確かに苦しめられたけど、いい人はいっぱい居ました。それは嘘ではありません。


父の顔の打撲痕を見てから、私の体調がまた悪くなっていきました。食べられないのです。食べても食べても吐いてしまうのです。

ずっと我慢をしてきていましたが、友人の家に行っても吐いてしまい、私は予定より早めに心療内科に行くことにしたのです。

父も私の様子に察知したようでしたが、幼い頃に受けた暴力から逃れられたのにそれを父の怪我を見て、それを通してトラウマが発生したのだそうです。

未だに吐き気を催して吐いてしまう時があります。

体調がどうにも戻らず、私は夫と相談し、喫茶店の仕事を辞めようと決意しました。美嘉さんにそれを報告するのは心苦しかったです。

仕事を辞める最後の日、美嘉さんは私に言いました。

「めぐちゃん、ごめんね。教会に2世を理解しようとしない人たちも居るからめぐちゃんはこんなに辛い思いをたくさんしてきたんだね。私は父母様のことは裏切れないし、今後も教会を離れるつもりはないけど、めぐちゃんみたいな2世が居るのは本当に申し訳なかったと思うよ。お母さんのこともあるし、本当に今回の事件を通して教会が悔い改めて再出発しないとまた同じようなことが起きると思う。私たち教会員がそこを理解しないといけないと思う。めぐちゃんはとにかく今は休んで…。めぐちゃんは頑張ってるからね。お母さんにそんな仕打ちを受けたとしても、めぐちゃんはそれに気付いて子どもに接してあげれているよ。めぐちゃんはよくやってる、何もできないことないよ。めぐちゃんが子どもを大事にしてる結果が子どもに出ているよ。」

私はまた涙が出そうになりました。母からは「お前は何をやっても出来ない。中途半端だし、すぐ諦める。何も出来ない逃げ続けるだけの人間」と言われていたので美嘉さんのこの言葉には本当に救われました。

中には美嘉さんのような教会員の方もいらっしゃるのです。

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