第28話 王都襲撃 午前の部
リカルドは緊張していた。いよいよ決行の日だ。
ダンスホールの前には荷台付きの馬車が10台並んでいた。
1台に御者役で2名、馬車の中に男3名、女1名が乗り込むことになっている。女性は昨日の訓練の教官役だったメイドが10名乗り込んだ。御者役も含めて、全員が覆面を装着した。
2台1チームで交番を襲撃することになっている。当然、城内の衛兵たちが駆けつけてくるはずだが、上手くかわす方法があるので心配は無用とのことだ。
リカルドは馬車の中の男の1人だった。
「行くわよ。出発して」
突然、同席していたメイドが御者に声をかけた。同じタイミングでもう1台の馬車も動き出す。
(どうやって連絡を取り合っているんだ? それに、いったい、このメイドは何者なんだ?)
昨日の訓練でも思ったが、普通のメイドではない。特殊な訓練を受けた軍人のようだ。
メイドが御者にも聞こえるように少し大きめの声で最終確認をする。
「いい? 警官を素早く縛り上げて、荷台に放り込むのよ。決して殺してはだめ。武器で手足を狙うように。頭は絶対にダメ。お腹もダメよ。いいわねっ」
リカルドたちは昨日散々やらされた訓練を思い出しながらゆっくりと頷く。
「さあ、着いたわよ。動いてっ」
リカルドは馬車から飛び降り、交番に一目散に駆けつける。
交番には3人の警官がいて、こちらを見て驚いている。
リカルドの武器はヌンチャクと呼ばれるものだ。昨日の訓練通り、低い体勢で足を狙いながらヌンチャクを振り回す。
同士討ちをさけるため、ヌンチャクを持って足を狙うもの、棒を持って手や腕を狙うもの、拘束具を持つものが一斉に3人1組で1人の警官に突撃する。1人は予備でもたつきそうなところに加勢する。
警官は武道を嗜んでいるが、意表を突かれたのと、3,4人で一気に攻められたことで、通常の力を全く出せない。
リカルドたちはなんとか3人を縛り上げ、馬車の荷台に放り込み、幌で隠し、馬車に乗り込んだ。
「あなたたちに怪我はない?」
メイドがリカルドたちに確認する。気づかないうちに怪我をしていたりするらしいので、気を落ち着かせて点検した。怪我はないようだ。
「次、行けるわね」
リカルドたちは頷く。御者からも問題ないと返答が来た。
突然の交番襲撃に住民たちが騒ぎ始めていたが、何が起きているのかを正確に把握しているのは少数だ。その住民をかき分けるようにして馬車は次の交番へと向かう。
次の交番に向かう途中で、メイドが、右に入ってとか、一時停止してなどの指示を御者に出している。
同じように残り2か所を襲撃して、全部で9人の警官を捕縛して、王都から数キロ離れた海岸線の集合場所まで無事到着した。
リカルドはとにかく夢中だった。ほっとした途端、手足の関節がかなり痛くなった。相当力が入っていたのであろう。体は汗でびっしょりだ。ほかの仲間たちも汗だくだった。メイドだけが凛とした涼しげな顔をしているのが印象的だった。
集合場所には昨日の司会のエイがいた。
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