第19話 輿入れ
波止場には、俺、サーシャ、ガリレイ神父、トム、ベンの5人と、サユリとイーサン、レベッカの合計8名が、ルナの船団の到着を待っていた。
遠くに見えていた船影がみるみる近づいて来る。
総勢200名の大船団だった。
ルナは当初10人ぐらいでの来島を考えていたのだが、ナタール王が島での暮らしに困らないようにと、王自らが厳選した職人150名、侍女20名、兵士20名を連れていくことを条件に来島を許可したため、ルナも従わざるを得なかったのだ。
その人たち、誰がどうやって養っていくんだ?
と輿入れのメンバが決まったときにルナに尋ねたところ、毎月、200名分の金と食料と生活用品を本国から輸送するらしい。その代わりにレンガを持って帰るという。
これ、完全に貿易だ。場合によっては島がナタールに植民地化されているとエルグランドに思われてしまうかもしれない。
東の波止場ではなく、新たに西に港を作って、そちらに入港してもらわないと、いろいろとまずいな。
といったルナとのやり取りを思い出していたら、巨大な帆船が4隻沖に停泊し、それぞれの船から小型の船が出され、波止場に着いた。
最初に着いた船から、体格のいい男たちが5名降りてきて、すぐに俺の方に駆けてきた。
リーダーと思われる精悍な若者が、俺に向かって敬礼した。
「アレン王子様でございますか」
「はい、そうです」
「我々はルナ姫様をお守りする親衛隊でございます。全部で20名おります。私は隊長のゼルダです。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします。長旅、ご苦労様です」
「それでは、配置に戻ります」
そういって、男たちは波止場に戻り、次から次へと到着する船の乗員を陸地へと降ろしている。
何隻かの船が到着した後、サーシャの妹たち2人とレベッカの妹とサユリの弟が乗った船が波止場に着いた。
サーシャ、レベッカ、サユリが駆け出して、兄弟と抱き合い、再会を喜んでいる。
レベッカの妹のブレンダは双子だったのか。レベッカに瓜二つだ。二人が俺のところに近づいて来た。
「アレン様、本当にありがとうございます。妹の病気まで治して頂いたそうで、我ら姉妹はアレン様に生涯の忠誠を誓います」
美女が二人跪いて頭を垂れるので、俺は困ってしまった。
「そんな大袈裟な。でも、喜んでいただいてよかったです。また何かありましたら、遠慮なく言ってください」
後ろに妹2人を従えて、サーシャがお礼の順番待ちをしている。その後ろにはムサシくんを連れたサユリさんとイーサンも順番待ちしていた。
次々に大袈裟なお礼を言われて、俺が恐縮していると、波止場の方が騒がしくなった。
ルナ姫の乗った船が帆船を出たところだった。
俺は何度もお礼を言って来る人たちに失礼をして、波止場まで走った。
前世の日本でも、ルナは瑠奈という名の美しい女性だった。俺は82歳で瑠奈に看取られながら前生を終え、その後、輪廻の輪のなかで100年間の魂の休息期間を経て、この世界に転生した。
俺にはその100年間の記憶はないため、15年ぶりの再会だが、ルナにとっては、115年間待ちに待った瞬間だ。
ルナが皆が止めるのも聞かず、船の上で立ち上がって、笑顔で俺に手を振っている。俺も手を振りかえした。
ルナの美しい姿がどんどん近づいて来る。もうルナは待っていられないようで、海に飛び込んでしまうような勢いだ。それをお付きの2人が懸命に止めている。恐らく彼女たちがイチとニイだろう。
そして、遂にルナの船が波止場に着いた。ルナが船から飛び出して、俺の胸に飛び込んできた。
ああ、懐かしい。瑠奈の匂いだ。いつの時代もルナは花の香りがする。俺はルナを思い切り抱きしめた。
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