第14話 依頼の遂行 ルナ視点

ルナはアレンから4つの仕事を頼まれた。


「今世も女神使いが荒いわね。でも、私を頼ってくれて、とても嬉しいわ」


最初の依頼は簡単だから、さっさと済ませてしまいましょう。


日の神アポロンからの定時連絡の後に、アポロンに作業を依頼することにした。ルナは人間に憑依している間は、精神が肉体に固定されてしまうため、移動できる範囲が肉体の制限を受けてしまう。したがって、神託は他の神に依頼するのがよい。


「アポロン、教皇に神託を下して頂戴。内容は、レンガ島にいるガイレイ神父の7神教からの全面支援と教会におけるガリレイ派の地位の復活よ」


「ルナ、理由は何だい?」


「それはアポロンが考えるのよ」


1つ目の依頼はこれで完了だ。


2つ目も教会関係なのでアポロンにやってもらおう。


「アポロン、もう一つあるのよ。王都の教会にサーシャの妹が2人シスターとして仕えているの。ソフィアとメリンダという名前よ。この2人を説得して、私のレンガ島行きの一行に加えて頂戴」


「どうやって説得するんだい?」


「それもアポロンが考えるのよ」


2つ目も完了だ。


ただアポロンに振っているだけだが、ルナは達成感を味わっていた。アレンの役に立っているという充実感に満たされていく。


ああ、アレンの役に立つって、本当に気持ちがいいわ。


「アポロン、まだいるの? 早く行って」


「……」


まったく、ぐずぐずして。あれで太陽神だなんて、天界も人材不足よね。


残り2つは現場に行く必要がある。レベッカの病弱な妹は、まずは病気を治さないとね。医療の神に治してもらえばいいか。アスクレーピオスと連絡を取るにはどうすればいいかしら。


しまったわ、アポロンに頼めばよかった。


「アポロン、まだいる?」


「いるよ」


「あら、まだ行ってなかったの。でも、良い判断よ。アスクレーピオスにね、ブレンダ・キルリスの病気を治すようにお願いしてくれる?」


「どこにいるんだ?」


「それはアポロンが探すのよ」


「なあ、ルナ。少しおかしいと思わないか?」


アポロンは少し不機嫌な声を出した。


「何がよ」


「なぜ、この太陽神たるアポロン様が、お前の手足となって働かないといけないんだ?」


「え? まさか、人の身に落ちている私にこんな難しい仕事をさせるの!?」


「いや、そうは言わないが……」


「じゃあ、お願い。よろしくね」


「くそう、なんで俺が……」


どうせ暇なんだから、さっさと動きなさいよ。


さて、となると、取り急ぎ自分でやらないといけないのは、サユリの弟君の救出ね。ムサシ君だったわよね。


あすなろ院という孤児院にいるのよね。夜さらってくるってのもいいけど、職員に堂々と連れ出してもらおうかしら。ブレンダの救出も必要だし、王都に行くしかないわね。


「ちょっと誰か」


ルナは集まったなかから生理中の侍女を選んで、残りは下げさせた。


「エルグランド王国の王都に行くわよ。馬を用意して頂戴」


生理中の女性を操る力は、ルナが人間に憑依していても使用できる数少ない月の女神の力だ。このほか、潮の満ち引きを操る力と狼男を狼にしたり人間にしたりできる力があるが、今のところ、使い道はない。


ルナは馬にまたがり、単騎で王都に向かった。

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