第9話 婦人会の活動内容
午前中は養蚕の様子を見に行くのが日課になっていた。最初は子供の発案だからと半信半疑だったようだが、日々目に見える効果が上がるため、最近はよく質問が来るようになった。
その後、基本給と歩合制を組み合わせた給与体系にしたところ、あちこちでつかまって質問攻めにあうようになった。いい傾向だ。
午後は兄対策だ。ただ防衛するだけではつまらない。イーサンも含めた5人をこちらの味方にして、兄に逆襲できれば最高だ。
兄のうち手強いのは何だかんだ言っても、長兄のリチャードだ。
性格は最悪だが、能力は高い。武力も知力も俺と大差ないのだ。
それと四男のデイビスだ。こいつは異常に頭がキレる。
俺なんかに構うことはないのに、何故か幼少の頃から、この二人から俺は警戒され、隙あらば陥れられそうになってきたのだ。
敵になるより味方にした方が、はるかに楽で有用なのに。そういうところが愚かだと思うし、だからこそ、俺は奴らに勝利できると確信している。愚か者に負けるはずがないからだ。
さて、まずはイーサンから対応しよう。イーサンの嫁は来歴簿を調べたところ、盗賊団の女首領だった。人質は10歳の弟だそうだ。
(弟はどこにいるの?)
母さんに聞いたところ、孤児院にいるらしい。両親はすでに死んでしまっているとのことだ。
(弟をこの島に連れて来ることを約束して引き込もうか)
兄がイーサンの嫁に接触するまでには少し時間がある。どういう人か探りを入れよう。
「サーシャさん、町長の奥さんてどんな方ですか?」
俺は今、サーシャの家で夕食をご馳走になっている。落ち着いたら話そうと約束していたが、数日前にサーシャからお誘いがあったのだ。
「サユリさんですね。優しい感じの黒髪の美女ですよ。まだ18歳だそうです。おとなしい人です」
あれ? 想像と違うな。
「盗賊団の首領なんですよね?」
「警察の手入れがあったときに盗賊に捕まっていた被害者です」
王国の警察って、そこまで無能なのか?
「どこでどう間違えればそんなことになるんですかね?」
「今度本人に直接お聞きになるといいですよ。サユリさんは王子に興味あるみたいですよ」
あれ? もう兄が接触したのか?
あるいはサユリを兄が事前に送りこんでいた?
兄たちは俺を島に送ることをかなり前から計画していた?
俺は自分や母さんやルナのチートスキルで、知らず知らずに楽勝だと油断していたかもしれない。
「分かりました。今度聞いてみます。ところで、サーシャさん、婦人会って何をしているんですか?」
サーシャは何故か待ってましたという表情になった。
「一言でいうと、結婚相手を探す会です。この島は女性が少ないので、一妻多夫制なのです」
「そうなんですか!?」
これはかなり驚いた。あれ?
「 ひょっとしてサユリさんが俺に興味あるってのは」
「はい、夫としてです」
マジか!?
婦人会は月に一度、婚活パーティーを開くそうで、俺は次回招待されることが内定しているそうだ。
「え? いつですか?」
「明日の夜です。参加は義務付けられてます。王子様、しかとお伝えしましたから」
サーシャさん、伝言係だったのか。明日だなんて急すぎるよ!
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