夢盾

うたぴょん

夢盾

 目を覚ますと見たことのない天井が広がる。ただ普通に寝ようと布団に入っただけだったのだが、部屋を見渡す限り病院だということは早期に気づくことができた。ベットから降りようとすると部屋の扉がゴロゴロとなり、医者らしき人が入ってきた。

「あぁ、起きたんだね」

「はい、昨日は何があったんですか?」

「それより、少しきてくれないか、見せないといけないものがあってね。けどこれより後のことは家族にも言わないでくれ。ここにいる者だけの秘密にしといてくれ」

 そういうと医者らしき人は手招きしながら部屋を出ていった。薄気味悪かったがついて行かないわけにもいかず、彼についていくことにした。ついて行く途中建物内の内装を見回ったがよくドラマとかで撮影されている大学病院のようだったが、看護師や患者は誰一人としていない。そんなことを考えるときみが悪くなるなるので、何も考えずただひたすらついて行くことにした。

「さぁ、この部屋に入ってくれ」

 医者に促され部屋のドアを開ける。部屋の中は暗く空気はどんよりとしていた。しかし、そんなことを忘れるようなぐらい、臭いが酷かった何か腐った匂いが、それも濃く臭った。

「なんですかこれ?」

 あまりの匂いに嗚咽が走る。医者は何事もなくその部屋を通り過ぎて行く

「答えて下さい何なんですか?!この部屋は?」

 医者はため息混じりに

「いいか、そんなことなんか考えるな取り敢えずついてこい」

 目が慣れてきたのだろうか通路の端には生きているのか死んでいるのかも分からない人たちが横になっていた。段々ときみが悪くなり横を見ずに前を見て歩いて行った。

 医者はボタンを押すとエレベーターが開きそこに乗る。医者は4階のボタンを押しドアが閉まる。4階のドアが開くとそこはさっきとは違い阿鼻叫喚の地獄であった。周りの患者らしき人は医者に助けを求めるも医者は手を払い除け黙々と進んでいった。突き当たりを左に曲がると部屋に案内され椅子に座るように言われた。

「いいかい、今から何枚かの写真を見せるから何かわかったことがあれば教えてくれ」

 視力検査を受けるときの機械みたいなものを覗き込んだ。そこで見たものは‥‥いやこの場で言えるようなものではない、そう言葉では言い表せないくらいだった。

 僕は無我夢中で走り出した。医者の人が制止していた気がするが、そんなことは気にせずただこの場所から離れたい一心で走った、とにかく走った。エレベーターのところまでつき1階のボタンを押す。僕は胸を撫で下ろした。

 エレベーターを降りると教室の中だった。窓の外から景色が見えることからどうやらここは一階ではないようだ。慌ててもう一度エレベーターに乗ろうとしても後ろには、エレベーターのドアではなく教室のドアに置き換わっていた。

 なんだかよく分からないところに連れてこられた気分だった。しかし、何だかこの教室には見覚えがあった。教室なんてどこも同じようなところだろって思うかもしれないが、自分の通っていた高校にしかなかったであろう特徴的な教室のライトがそっくりなのだ。とにかくこの学校から外に出ようとして、教室のドアを開ける。開かないものだと思っていたのですんなり開いたことにも何か意味があるのではないかと感じてしまう。

「ねぇ、もう帰るの?」

 そう言われ後ろから肩を叩かれた。

「まだここにいたいと思わないの?」

 立て続けな質問に何か答えないとという直感が働いたのかとにかく何の違和感もない答え方をしないとと思った。

 「ああ、帰るよ。てか早く帰りたいんだ」

声は震えてただろうか、早く解放してもらいたい一心だった。

「ふーん‥‥‥‥またそうやって私を見捨てるんだ」

「は?何を言って‥‥‥‥‥‥‥‥」

 彼女の顔は影のせいか墨汁をたらしたように真っ暗になっていた。

「昔もこんな感じだったよね‥‥‥。もういい」

「何だよ昔って!覚えてないんだ全く」

「私の言うことを聞かなければ壊しちゃえばいいんだ」

そういって彼女は後ろに隠して持っていたバットを思いっきり足に向けて振りかざす。そんなの避ける暇なんてなく思いっきり当たってしまった。無我夢中でとにかく逃げることを優先する。足を引き摺りながらもとにかく前は前へと走った。ここら辺の状況は変わってなければ迷うことなんてない。後ろから追いかけてきている音が聞こえるが段々と小さくなっているようだ。

 一つ前の階段は使わず、もう一つ奥の階段を使って降りる。片足で器用に降りて行くとき、背中に何か大きなものが当たった。足音は聞こえてなかったのにと思い後ろを振り向くと、彼女はバットを投げていた。それが当たったらしい。階段から転げ落ち意識が朦朧とするなか、彼女は自分めがけて思いっきりバットを振り下ろした。

 目が覚めるとそこにはいつもと同じような白い天井があった。よかった。あれは夢だったようだ。額からは大量の汗がでていた。それを拭おうとするも、手は何かに固定されていて動かせなかった。

〜〜〜〜〜完〜〜〜〜〜

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夢盾 うたぴょん @Utapyon2021

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