テーマを決めて書く小説①
アチャレッド
第一作目「ごちそうさま」①
料理をしてみると分かることがある。
卵焼きは砂糖を入れ過ぎると焦げやすかったり。
揚げ物の煙は換気扇だけでは吸い切れず部屋が煙たくなったり。あと夏場はキツイ。
味噌汁は味噌だけでは駄目でダシが必要だったり。
年齢によって味付けの濃薄は案外死活問題だったりと。
ボーッと作る方がかえって難しい。
心配そうに見つめる父もこちらを見るのはいいが手伝おうと席を立ちはしない。
兄はチラチラ見ながらスーツに着替えている。
まぁしかし学生が一番時間があるからと言い出したのも自分なのでそう文句も言ってられない。
そもそもこの時点で文句を言い出したら多分今後が耐えられないだろう。
それは父も兄も分かってて黙ってる事もある筈だ。
少し黒ずんだ料理を一つずつ丁寧にテーブルに並べていく。
「見栄えは……まぁまぁだな。」
父の唐突の評価も初日は見逃す事にした。
全員が席につき箸を前に置き同時に両手を合わせる。
「いただきます。」
まず父が料理に箸をつけた。
言わずとも分かる表情がで兄に目線を向ける。
倣うように兄も料理を口に運び顔をすぼめる。
答えは分かっていたが順番が来たので一つ口にしてみた。
二人の表情を見るに多分自分もいい顔はしてないだろう。
まぁ分かってはいた。
分かっていた事だが…………。
「不味いな。」
「ああ。美味しくない。」
「つか多分調味料ミスってんなこれ。」
三人で酷評し、クスクスと笑い合う。
「まぁまだ初日だから。」
「改善の余地ありだな。」
「エラっそうに……。」
片眉だけをあげて不満を表したが父と兄は苦笑いしながら箸を進めた。
まぁだが始まったばかりなのは事実だ。
三人の視界の重なる所に置かれた母の写真に視線を送る。
いきなり代わりはできないね。やっぱりさ。
「まぁこれから頑張ってみるよ。」
三人に向けて言った。
食べ終わり空になったが少しだけ汚れの残った皿にまた三人で手を合わせた。
「ごちそうさま。」
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