◆義妹はアサシンで短剣使い

 βテスト中は、簡易アカウントを作成・登録すればいいらしい。

 東雲さんからARコンタクトレンズを貰い、装着。

 それから『コネクション』と発すれば、音声認識で接続されるようだ。


 俺はさっそくその合言葉を口に出してみた。



「コネクション」



 すると目の前に【Soulソウル Forceフォース Onlineオンライン:専用サーバーへ接続中...】と表示された。


 すげぇ、なんだこの画面。

 SFのホログラムかよ。

 まるで映画みたいだ。


 目の前にメニュー画面が現れ、アカウント作成画面になった。



「兄様、右手を伸ばすとキーボードが出るから」

「マジか。どれどれ」


 ポップアップして現れる仮想キーボード。これで入力すればいいらしい。便利だな。スマホいらないじゃん……。


 手順に従い、俺はアカウントを作成した。


 すると、キセルを吹かす東雲さんが助言をくれた。


「登録完了だね。キャラクターは、己の運動能力とかによって決定されるから」

「そうなんですか、東雲さん。普通、剣士とか選べるものじゃないんです?」


「最初は、適正の職業ジョブが自動で割り当てられる仕様になっている。気に入らなければ転職も可能だ」


 そういうことか。

 どうやら、最初は全員『冒険者』みたいな扱いらしい。しばらくすると、剣士や錬金術師といった職業が付与されるようだ。

 レベルアップして『Lv.30』になると転職も可能だとか。


 なるほどね、ちょっと面白そうじゃん。



「モンスターを倒して稼げばいいんですよね」



 東雲さんに聞いてみると、知花が答えてくれた。



「そうですよ、兄様。外に出れば、どこにでもモンスターが出現するんです。弱いモンスターは、スライムとかゴブリンですね。ちょっと強いのがオーク。

 稀にボスモンスターも出現しますよ」


「よし、さっそく倒しに行くか」


「分かりました。東雲さん、わたしと兄様は討伐クエストを始めます」



 知花もSFOを起動したようだ。


 【セイフティハウス内でのログインがありました】

 【UserID:XXX007A】


 なんてメッセージが現れた。

 建物内で起動する場合、自動感知するようだ。



「気を付けてな、知花。それに佐藤くん」



 知花は討伐クエストを受注し、お店の外へ向かっていく。俺も後をついていった。



 * * *



 時刻は二十時。

 ひとまず、今日は練習ということで、近くの公園を回ることにした。


「道中、気を付けて下さいね。たまに強いモンスターも出現するので」

「分かった。……そういえば、こっちの体力HPが尽きた場合、どうなるんだ? リアルに死んだりしないよな」


「現実で死ぬことはありません。でも、ゲームオーバーの場合はその時点で、ゲームから遮断されるんです」


 強制ログアウトってことらしい。再ログインには三分間の待機時間クールタイムがあるようだ。


「だいたい理解した」

「モンスターから受けるダメージは、ある程度は痛覚として認識されるのでちょっと痛いですよ」


「マジかよ」


 うわ、ちょっとビビってきた。

 でもお金を稼げるのはいいよなあ。

 早く実戦をしてみたい。


 公園内に入っていくと、人はいなかった。


 街灯が周囲を照らすだけ。

 だけど、俺と知花の視界には【HP】【MP】【ITEM】【SKILL】【STATUS】や【MAP】が表示されていた。


 現実なのにゲームの中みたいだ。

 拡張現実ARの技術って凄いや。



「……!」



 歩いていると、知花が足を止めた。



「どうした知花」

「モンスターが現れました」


 茂みからカサカサ音がして――それは現れた。



「うわっ、なんだこのデカイの!!」

「あれは、アックスコボルトです。あの斧は“トマホーク”で……手強いですよ」


 コボルトだって?

 あの獣人というか、犬っぽい感じの獣系モンスターか。



「いきなり強敵っぽいな」


 アックスコボルトが斧を振るって向かってくる。そりゃ、襲い掛かってくるよな。


「兄様、とりあえず見ていてください」

「お、おう」


 そういえば、知花は暗殺者アサシンっぽい服を着ていた。手には短剣を持っていた。



「てやッ!!」



 一瞬でアックスコボルトとの間合いを詰め、一閃を放つ。

 高火力のダメージを与えたのか、コボルトは一撃で沈んだ。



「す、すげぇ……あの強そうなコボルトをあっさり」

「わたしの武器は鍛えてあるんです。精錬システムもありますから」

「詳しすぎるだろ。という俺も昔はよくMMORPGをプレイしていたけどな」



 楽しくなってきたな。

 俺も戦ってみよう。


 ……そら、出てきた。


 今度は短剣を持ったゴブリンが現れた。

 あれなら俺でも倒せそうだな。



「俺の武器は……『剣』か」



 いつの間にか腰には剣があった。


「兄様、最初は剣が支給されるんです。それ、初心冒険者用ですから」


「なるほどな。じゃ、これでいく」



 鞘から剣を抜き、俺は構えた。

 おぉ、軽いな。


 剣道をかじったことのある俺は、それなりに剣術が出来た。それなり、だが。



『――ギッ!!』



 ゴブリンが接近してくる。

 俺を刺し殺そうとして向かってきた。


 なんだ、ショボイ動きじゃないか。


 俺は剣を振るった。



「とりゃあああッ!」



 ズシャッと剣閃が命中して、ゴブリンが真っ二つになった。



 ……おぉ、倒せた。



 【EXP:330】

 【BELL:20】



 経験値とお金を手に入れた。

 へえ、この“ベル”がお金か。


 こうやってモンスターを倒して稼ぐらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る