第81話 覆せ忠臣蔵~上杉綱憲に転生しました・前編
俺の名前は奥洲天成。
死後、天界へと来たのであるが……
『あら~、これはまたまた……』
女神が報告書を見て、次いで俺を見てプププと笑う。
「何がおかしいんだ?」
『いや~、またまた、余生罵倒系の依頼が来たなぁって』
「何だと?」
モアシル・バルボサとなり50年罵倒され続けた悪しき記憶が思い返される。余生罵倒系は辛い。素直に殺してほしい。
「そんな悲惨な奴がまだいるのか?」
『それがいるのよね。しかも、この人は自分の親を殺されて馬鹿にされたんだから世話がないわ』
「何ぃ!?」
親を殺されて、しかも馬鹿にされる?
親殺しの冤罪でも受けてしまったのだろうか。
「一体、誰なんだ?」
『上杉
「上杉綱憲……誰だっけ?」
上杉というと、謙信とか景勝とか鷹山とか達也とか和也が思い浮かぶが、そのどれとも該当しない。
『吉良上野介の息子よ』
「吉良上野介!?」
つまり、忠臣蔵か。
忠臣蔵は主従関係の絆を示す話として愛されているが、吉良一族としてみたらあれほど酷い話はない。
何せ、いきなり江戸城で斬りかかられて、斬りかかった方が処分されたら、その子分達が恨みに思って総がかりで復讐に来たのであるから。
おまけに世論までそれを期待していたというのだから、一体全体どうなっているのだという話である。
確かに吉良の息子は上杉家に養子に行ったという話があった。それが綱憲のようだ。
彼は父親を救出しようとしたという話もあるが、うまくいかなかった。
そのため、「上杉は父親も守れずにダッセー」と言われたとか言われなかったという話がある。
少なくとも、忠臣蔵の中では上杉家は情けない扱いだ。
おかしいのではないか?
何故、被害者の息子が、「情けない」と更に叩かれなければならないのだ。
『上杉家は謙信以来強いって思われていたからね。ボクシングチャンピオンがそばにいたのに守れなかったみたいな感じなんじゃないの?』
「被害者に対して酷すぎるだろ」
『ま、事件当時の話ではなくて、講談で広がっていく中で敵役が吉良上野介だけだと物足りなくて上杉家も悪くなったんじゃないの? ただ……』
「そういうことか」
そうだ。
世論は酷すぎる。
そんな奴らを黙らせるため、俺は赤穂浪士共を返り討ちにしなければならない!
打倒、大石内蔵助!
打倒、赤穂藩!
打倒、世論!
間違いだらけのこの世界、俺が正してやる!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます