第44話 子供の幸せな世界

 俺の名前は奥洲天成。

 児童相談所職員として頑張っていた俺は、過労が祟って心筋梗塞になって急死してしまった。あぁ、俺がいなくなると同僚のノルマが増えて、ますます虐待で死ぬ子供が増えてしまうのかもしれない……


『大変だったわねぇ。お疲れ様』

 俺の苦労を知っているせいか、女神も優しい。

『次はもう少し楽な人生がいいんじゃない? 腹上死する道楽息子にでも転生する?』

「いや、遠慮します」

 腹上死って何だよ……。

「昔はここまで子供が生きづらい世界ではなかったと思うんです。中世世界に転生したい」

『うーん、それはちょっと認識違いかなと思うけど、確認したいのなら止めるつもりはないわ』

 かくして、俺は中世中国に転生することになった。


 俺はとある村の副村長として転生した。

 村といっても、一万人近い規模のいるところだ。権限は別として、多くの人間の生活に関わる仕事を担っていて、緊張度が高い。

 やりがいのある仕事だ。

 しかし、物事はうまく行き続けるわけではない。

 ある年、村は大飢饉に見舞われた。

「これじゃあどうにもならねぇ。もう最後の手しかねえ」

 村長が重々しく宣言し、他の村人が涙している。

「……最後の手?」

「天成。おまえは若いから知らないだろう。辛いだろうが覚えておけ」

 村長はそう言って村を回る。女児のいる家を回り、女児を預かっていく。

 まとまった女児をまとめて崖の方へと連れていった。

「えっ、まさか……」

 と思う間もなく、村長をはじめとした村の重鎮は女児を次々崖下に投じていく。

「村長! 何てことをするんですか!?」

「天成、仕方ないのじゃ。この飢饉では何十万という人間が死ぬはずだ。終わった後、女児を残しても年に一人しか増えん。しかし、男なら年に数十人は増やすことができる。食料に限界がある以上、回復後のことを考えれば女児を殺すしかないのじゃ」

 ぐ、ぐぬぅぅ。

 現代でそんなことを言えば、一発で「セクハラだ」となってしまうが、確かに昔はそういう考え方もあったのだろう。

 ただ、どの村もそうしていたら、男過多で人口が回復しないと思うのだが。


 あれ?

 確かイスラームが一夫多妻を決めたのは戦争とか多くて、男が少なくなったから、寡婦を減らそうということで決めたんじゃなかったっけ?

 その結果としてイスラーム圏は今でも出生率はかなり高めである。

 ということは、出生率を高めたいなら間引くべきは女児ではなく、男児……?



"女神の一言"

 昔は一家郎党まとめて住んでいたこともありましたから、若い夫婦の間にできた子供は伯父叔母あたりも含めた形で育てていたんですよね。


 で、子供も多かったので、若くない夫婦の子供については育児は兄ちゃんや姉ちゃんの役目でした。

 保育園や幼稚園というのは近代現代になって出てきたあくまで例外的なものなんですよね。

 昨今の日本では特に色々不備が言われていますけれど、その部分の機能不全は人類史上初めての経験なので解決策も簡単には見つからない、という現実はあるのかもしれませんね。


  最後のコメントはサラブレッドの世界などを見ると、そうなのかなと思いますが、さてはて……?

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