第20話 【番外編】辺境の村にいい装備がある理由

注:今回は実世界ではなく、ゲーム的RPG世界の話です。


 俺の名前は奥洲天成。

 ちょっとしたトラブルに巻き込まれた俺は、スライム酸の中につけられて骨も溶けるという最期を遂げたが、転生して鉄砲玉(勇者)となった。


「勇者テンセーよ。おまえには期待している」

「任せてください、おやっさん。交わした盃にそぐわぬ働きをしてみせますので」

「お、おやっさん?」

「間違えました。国王様」


 親父……じゃなくて国王によって魔王(対立組織のボス)討伐を任された俺は早速装備を整えるために武器屋に向かった。

 しかし、そこで俺は驚くべきものを見る。


「何じゃあ! この情けない販売リストは? おどれは、ワシにひのきの棒でカチコミせいっちゅうんか!? トカレフくらいはあるやろ!」

 武器屋は俺を余所者と舐めよった。この王都の武器商人でありながら、鉄砲玉の俺にろくでもない武器しか提供しようとしなかったんや。

 これは俺を馬鹿にするだけやない。親父こくおうまで馬鹿にするということや。俺は示しをつけるために、武器屋の建物をボコボコにして、再度問い詰めたった。

「と、トカレフなるものはありませんが、AKD-47あきやまきよはらですとらーでとくどうON砲ブイナイン砲は遥か先のサイハテ村なら売っています!」

「何やと、こらぁ!? 何で王都にロクなもんがなくて、サイハテ村のようなド田舎に最新装備が売っておるんじゃあ!? ワレェ、舐めとったら、ドタマかち割ってまうど!」

「お、お許し下さい!」


 武器屋のアホ商人め、中々口を割らんかったが、娘をスライムに売ると言ったらようやく白状しよった。


「我々は装備の上でも、魔王軍に圧倒的に劣っているのです」

 武器屋が言うには、我々人間界は圧倒的に不利で武器工場もほとんど制圧されたということやった。つまり、人間界はもうひのきの棒とか銅の剣くらいしか武器がないっちゅうことや。

 それじゃ、どうしようもないいう話があるが、世の中はうまいこと出来ておる。

 魔王軍の補給担当が金儲けをしたくて、人間達にいい武器を横流ししているっちゅうことや。奴らにしてみれば魔王軍の兵士に武器を配っても一文の得にもならんが、人間に売ればごっそり金になるからなぁ。

 だから、最前線に近い辺境の町や村にいい武器が売っているということやった。


 もう一つ理由がある。

「それに、辺境の村なら、魔王軍の幹部が直接武器を販売できますので」

 なるほど。

 確かに、辺境の村は激戦区やから兵士達や勇者達は出入りに加えられることになる。つまり、警備や治安部隊はおらんということや。魔王軍の幹部がこっそり武器を販売するには、ちょうどいいということや。

「そういうことか」

「は、はい。ですので、どうかこれ以上のご無体は……」

「しゃあない。とりあえず店中のひのきの棒と銅の剣で勘弁したるわ」

「ひ、ひぃぃぃ」


 やはり世の中はゼニや。

 魔王軍でも、人間でもそれは変わらん。

 ワシはこの棒と剣を独占して、今後やってくる新たなる勇者達に売りさばいて一山当てて、辺境の魔王軍幹部に取り入るんや。そうして、互いに独占的な販売ルートを築いて、WIN-WINの関係を築く。


 その日が楽しみや。


"神様の一言"

 最前線で武器が活発に取引されるというのは、近代戦の一つの特徴でもあるが、当然、昔のファンタジー世界だって行われていたのだろう(棒読み)


 ゲームによっては、時々スタート地点から別ルートで回ると急に敵が強くなるなんてことがあるが、これは前線の味方が突破されて、この方面から敵の精鋭が攻撃していると考えれば、解決するということだ。

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