第6話 女は強いよどこまでも
俺は奥洲天成。今回もまた以下略。
『えーと、今回はっと……(コロコロ)4ですね、じゃあ、頼もしいシングルマザーの息子として転生してもらいましょう』
「おい、女神、今、サイコロ振って決めなかったか?」
『な、何のことでしょう……。死んで転生するのに人(神)を疑うなんて、嘆かわしいですね。あはははは』
ということで、今回は珍しく0歳児まで遡って転生した。
俺は中小貴族夫婦の子供として生まれたが、2歳の時に父親が不幸にも流行り病で亡くなった。
母親は父親の財産の1/3を寡婦産として相続し、俺が5歳の時にとある子爵と再婚した。子爵は母より18年年長で当時45歳。人生50年時代だから程なく病死した。
母はまた寡婦産を相続して、今度は50歳の伯爵と結婚した。子爵、伯爵と出世魚にような結婚をしているような気がする。
説明が遅れたが、母は多分まあまあ美人なのだろうとは思う。
で、気も強いから、二度の相続で大金持ちになっているにも関わらず生活費は相手持ちだ。
でもって、その伯爵も5年経って病死した。
母は……以下略……この地方でも代表的な金持ちとなっていた。
その息子である俺はというと、母の財産は母が死なない限りは相続できない。母は三度の死別で懲りたのか、あるいはさすがに歳でモテなくなったのか、財産で遊び暮らしている。
羨ましい。俺もあの財産で好き勝手したい。しかし、それはまだまだ先のようだ。
そんな俺にも彼女が出来た。彼女はあからさまに金狙いな女だった。恐らくは俺の母の財産を俺がそのうち相続できるものと思ったのだろう。だが、母は健康そのものだ。病気一つしない。
そんなこんなで五年経った。彼女は「話が違うじゃない」と文句を言ってくるが、俺は保険の外交員ではないのだから、そんなことを言われてもどうしようもない。
待ってばかりもいられないので、俺は国王に従って風来の騎士として戦場に出た。まあまあ才能はあったのだろう、活躍して国王から褒美をもらえるようになったし、頻繁に戦場に出て、色々下賜品をもらうようになった。
そんなある日、俺は何の気なく屋敷で食事をしていたが……。
「ウッ! は、腹が……!」
俺はそのまま意識をなくなった。
『どうも~、お久しぶりです。天成さん』
俺は何十年かぶりに女神の前にいた。
『災難でしたね~。奥さんが、貴方の財産の1/3を寡婦産として欲しがって、毒殺してしまったみたいですね』
「そうだったのか……」
まさか、妻に財産狙いで殺されてしまうとは、あまりにも悲しい最期だった。
と思った時、あれと思った。
「1/3をあいつが取ったということは、残りは……?」
俺達には子供がいなかった。となると、残りの財産はどうなったのだ?
『それはもちろん、お母様に決まっているじゃないですか』
"女神の一言"
女性というと弱いイメージがありますが、中世の女性は優先権こそないものの相続権を認められていました。離婚してフランスの領土の大半を譲り受けた後、イングランド王と結婚したエレオノール・ド・アキテーヌのような存在も知られていますね。
また、本文中にもありますように、寡婦産を主張する権利も有していました。全員が貰えたわけではないようですが、係争にかかることにより財産処分に制限を受けた貴族も少なくなかったようです。
後々、別項を立てるかもしれませんが、この寡婦産を主張する女性の対処に失敗して没落したり勢力を失った貴族も少なからず存在していたようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます