リアル中世世界に転生しました

川野遥

第一部・リアル中世世界に転生しました

第1話 中世ヨーロッパの風景

 俺の名前は、奥洲天成おうしゅう てんせい

 どこにでもいるジャパニーズだ。

 この平凡な世界を抜け出し、どこか中世ヨーロッパの世界に転生したいなと願い続けること幾星霜。


 今、俺はトラックに撥ねられて、女神の前にいる。

 とは言っても、聞こえるのは声だけだけどな。


『じゃあ、天成さんは中世ヨーロッパに転生したいのですね』

「おうとも! 中世ヨーロッパでやり直すんだ!」

『分かりました』

 女神は何やら呪文のようなものを唱え始めた。

『それでは、中世ヨーロッパへBee! じゃなくて、Go!』


 俺は白い光に包まれて、意識を失った。


 意識を取り戻した時、俺は丘に寝転がっていた。

 そよ風に吹かれ、首を横に向けると草花が陽の光を受けてみずみずしく輝いている。

 少し離れたところを見てみると。

 おお、のどかな田園。回っている水車、遠くに見える石造りの街並み、そして、更に遠くに見える王城!


 間違いない! 俺は中世ヨーロッパの世界に転生したのだ!


 よし、早速、近くの街まで向かおう。って、徒歩しかないのか。

 あの農場の牛……牛はダメだな、せめて馬……。

 ダメだ、俺、馬に乗ったことねえや。


 仕方ない。歩いていくか。

 ちゃんと歩道を歩かねえとな。

 いやあ、しかし、何ていい風景なんだろう。山々の緑が美しい。川の水が青々としている。のどかで牧歌的な風景、これが欲しかったんだよ! 俺の人生には!


 しばらく歩いていると、

 おっ、自転車の連中が抜いていった。

 何だ、自転車があるなら、借りていけば……

 うん? 自転車。

 というか、今、気づいたけれど、アスファルトの歩道はおかしくねえか?


『あ、ごめんなさい。ツール・ド・フランスを観ながら作業してましたので、間違えてフランスの田舎に転生させてしまいました』


 何だと?

 女神のくせに人間の自転車レース観るのかよ?

 ……とすると、ここは現代?

 これだけ中世っぽい風景なのに?


"女神の一言"

 ヨーロッパの農村や古い地域は景観を変えない場所も多く、現代でも昔さながらの光景が広がっています。

 都市部ならともかく、田舎に転生した場合、実際に転生したのが13世紀なのか、21世紀なのか、一目で見破るのは難しいかもしれませんね。

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