俺はただ萌えブタでいたいだけなのに

犬ピース

俺はただ幼なじみでいたいだけなのに

プロローグ

高校の入学式まで残り数日となった春休み。

『あと少しでこのお気楽な生活も終わりか。』


俺は寂しさもあったが、多少は期待もあった。


中学であからさまにオタクだった俺は、

好きな女子にそれが原因でフラれてしまった。

しかも、その女子が俺に告白されたことを、おしゃべりな女友達に話した結果、翌日にはクラスメイト全員が俺が告白したことを知っていた。

そして、俺は学校に居づらくなった。


だから、同級生が行かないような遠くの高校にあえて進学した。


これで、これまでの人間関係全て捨てて、やり直しができる。


華々しく高校デビューってのもいいじゃないか。

メガネを外してコンタクトにし、髪はいつもと違う美容室でイマドキな髪型にしてもらった。


だが人間、中身はそう簡単には変えられない。


俺の場合は、二次元の美少女好きをやめられない。

たとえそれが恋の障壁しょうへきだとしてもだ。

黙っていれば、人が何を考えているかなんて、他人の知ったことじゃない。


美容院からの帰り道、俺は人だかりができているのが目に入った。

しかも全員男。カメラを抱えているものもちらほら。


いつもなら素通りするところだが、なぜかその日は気になり、足を止めた。

人と人の隙間から輪の中心を確認すると......


布面積少なめの黒のビキニに、肩には黒いマント。

頭には紫のウィッグ、手には杖を持った美少女が

カメラに向かってにこやかにポーズを披露していた。今期注目株のアニメのコスプレだ。


白い肌は自然発光するくらいに神々しく、

大福のようにふっくらとハリのある胸が

黒い布切れから今にもこぼれ落ちそうだ。

あらわになった太ももには、黒皮のガーターベルトが巻かれ絶妙にいやらしい。


そして何と言っても顔がかわいい。


今までに何人かコスプレイヤーを見たことがあったが、これほど二次元寄りに完成されたかわいさの女の子を、俺は未だかつて見たことがなかった。

きっと素でも相当美人なタイプだ。


俺は思わずスマホのカメラでその子の写真を撮っていた。





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