第27話 Sランク魔獣

「私たちが応戦します。はやく避難を!」

そう言って民を逃がそうとしているクレハたち、

「なんで今、こいつがくるのよ。」

目の前にいるのは機械仕掛けでできたような蜘蛛のような魔獣だった。そいつは魔法を気にすることなく突っ込んでくる。

「逃げるわけにはいかない!」

弾くことなく魔法を打ち続けるが、そいつはゆっくり大きい地響きを立てて近づいてきて、ついにクレハの前まで来た。蜘蛛は機械音を立てて、振り上げてた腕を振り下ろす。

         ドーーン!

音が鳴った場所を見ると、そこにはクレハの姿はなかった。

「大丈夫か?!クレハ!」

横から助けに入ったキリアがすんでのところで避けたのだった。

「キリあー、怖かったよー。」

そう言って泣きじゃくるクレハ、

「あぁ、まかせろ!あいつは俺たちがぶっ飛ばす。だからお前は、皆を連れてここから離れろ。」

指示を出して、クレハ達には速攻で逃げてもらった。後ろから近づき精霊王が俺の横に並ぶ。

「おい、精霊王。あいつはなんだ?」

「あいつは、マナイーター。Sランク魔獣だよ。魔力を吸収し、放出してくる。端的に言うと僕たちの天敵ってわけだ。」

「魔法が効かないのか、そりゃーめんどくさいな。」

そう言いつつ一つの技を発動させる。

[抑魔]

俺が抑魔を発動すると溢れ出ていた魔力が全て体内へと戻る。これは纏魔と断魔の掛け技で体内から魔力を纏わせて、身体強化を施すと言ったものだ。すなわち、攻撃は全部素手の物理といったわけだ。

「よし、やるか!」

「あぁ、やろうか。」

二人とも臨戦体勢に入る。

俺は瞬時に地を蹴り、デカグモとの距離を詰め、顔面に一発フルスイングの蹴りを入れる。だがしかしシンプルの打撃なので多少揺らいだがあまりダメージはないようだった。そして、俺は足を掴まれて大きく投げ飛ばされる。

「ってなー!」

俺は木に思いっきりぶつけられて頭から血を流す。俺の頭の線はこの時完全にプッチンと切れた。そんなことをしている間に精霊王が魔法を連発していた。

「風斬(ウィンドカッター)」

呟きながらやはり人とは異なる魔法を使うが全然効いていない。

「やはり、効かないか。」

「おい!どうすんだよこいつ。どうすりゃあ倒せる。」

俺は完全に我を忘れ冷静さを失っていた。が、そんなことはもうどうでもよかった。

「倒すには中にある核を壊すしかない。」

「はぁ!?中?!無理だろ。ダメージ通んないんだからさ!てか、あいつ1回目じゃないだろここに来たのそん時はどうしたんだよ。」

「あの時は、あの子がいたからな、」

そんなことを言い合っていると、蜘蛛は口を大きく開きキリアと精霊王の方へと目掛けて特大の魔力を放出する。

「ちっ!」

俺は瞬時に防御結界と自分自身に纏魔を発動させる。

精霊王は自分を水で囲み、前には真空の壁をつくった。でかい地響きをたてて二人に魔力がぶつかる。

「あっぶねぇな!こんなの何発も受けてられねぇぞ。」

「あぁ、そうだね。次で決めようか。」

精霊王が俺の方をなにかを言いたげな眼で見つめる。

「策があんのか?」

「あるよ。とりあえず僕があいつが吸収できないほどの魔力量の魔法を使ってあいつの外骨格を割る。多分致命傷まではいかない。そしたら、核があるはずだ。そこに君が全力を打ち込め。」

「了解!」

そう言って俺はまた、蜘蛛との距離を詰める。そうすると精霊王が

「貫け。」

[神雷槍(ゲイボルグ)]

超高密度で錬創された雷の槍が一直線に蜘蛛へと向かう。

「ギュええー!」

蜘蛛が機械音の悲鳴を上げて首当たりのところが破れる。俺はその瞬間に首のところあたりに核があることを魔眼で確認する。

「ここだな、」

首のとこまで纏魔"速"で移動する。そこで立ち止まり、体内で抑えていた魔力を右手へと集中させる。

「これで、終わりだ。」

そう言うと、拳へと移動させていた魔力を纏魔によって外側へと急激に放出する。すると、核に拳が当たる瞬間にキリアの黒い魔力が輝き弾けた。それはまるで太陽にように輝いた。その輝きに俺は眼を瞑らずにはいられなかった。少したって眼を開けると、そこには粉々になった蜘蛛の死骸があった

「はぁ?俺は核を潰すだけのつもりだったぞ。」

自分の拳を確認する。何もなかったようにそこには自分の拳があった。それを遠目に見ていたクレハたちがキリアの元へと駆け寄ってきた。

「キリア!大丈夫だった?」

クレハが俺の心配をしてくる。

「あぁ、大丈夫だ。」

すると、駆け寄ってきたエルフたちが

「お前、すごいな!」

「ほんとにかっこよかった。」

そんな言葉をかけてきた。エルフ達の表情にはもう、俺に対する敵対心はなく、あるのは感謝の表情だった。それを聞いて俺が少し恥ずかしくなっていると、

「ありがとう。キリアくん、君のおかげでまた私たちは救われた。」

そうエルフの里の長は言ってくれた。

そんな情景を見ていた精霊王は少し考え事をしていた。

(多分、今回もあいつの仕業だろうな。それにしても、ここで"黒陽"を発現させるか。面白い子だな本当に。もしかしたらこの子なら、あるいは)

何かを決めた精霊王はキリアの元へと歩いていてゆく。そして、

「キリアくん、君は強さを求めているんだろう。」

そう言ってきた。俺は決意のある顔へと戻し、

「はい。」

そう言うと精霊王は口角を少し上げ

「なら、僕の弟子にならないか?」

それを聞いたエルフたちは驚いた表情をしている。俺も驚いたが答えは決まっていたが、

「いや、少し考えさせてください。」

俺は少し申し訳なさそう言う。

「そう言うと思ったよ。まだ、少し迷いがあるんだろ。あの力の使い方がわからないから。なら準備ができたら世界樹の下までおいで3時間待ってあげる。それで君が来なかったらこの話はなしでいいよ。」

精霊王は背中で何かを語るように世界樹へと戻った。そのあと俺は一人で街へと戻りつつ、色なんことを考えたのだった。 


         2時間後

「やぁ、少年。最強になる気はあるかい。」

精霊王は世界樹のところへきた俺へそんな言葉をかける。俺はさっきよりもさらに覚悟、決意、全てが決まった顔で

「そのためにここにきた。」

そう告げた。



          3年後

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