第5話 狂い切った歯車

「キリアー早く用意しなさい」

「わかってます。すぐに終わらすから先に馬車に乗っておいてください。」

廊下を走り回り用意をするために急ぐ

(なぜこんなに焦っているかだって、ふふんそれは今日が僕の10歳の誕生日だからさ、ついに今日僕は念願の術式を手に入れる。これで僕の魔法の幅も広がってもっと周りからチヤホヤされるぞ!)

そんなことを考えながら準備をし、家族が待っている馬車へと急いで乗り込む、そして術式を与えられるエルカディア神殿へと向かった。

[神殿とは各国に一つ存在し、術式与えられる年になったものが術式を与えられる場所]

そして、馬車に揺られること半刻、エルカディア神殿へとつくと

「キリア=シューベルト様ですか。お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」

顔が見えない修道院のシスターであろう女性に神殿の中へと案内される。神秘的な神殿の中へと案内されると教壇の奥には神父であろう人が立っていた。

「家族の方はこちらの椅子へとお座りください。」

そうシスターが告げると、神父が

「キリア=シューベルトはこちらへ」

そう言われて教壇に行こうとすると、後ろから

「お兄様頑張ってください。」

「どんな術式をもらってもあなたは私の息子よ」

「キリア、気合いを入れて行ってきなさい。」

僕は涙が出そうになった。

(あぁ、そうか僕はこんなにも愛されているんだな)

そんなことを思いながら、出そうになった涙を堪えて駆け足で教壇へと向かう。今から、ここで術式を与えられるのだ。

「では、今より術式を与える。」

そう言いながら神父は教壇に置いている水晶に微力の魔力を流し天に対して祈りのようなものを捧げている。それを横目にキリアは

(さぁ、どんな術式を渡されるんだ。炎などの属性系の術式かそれとも、機械系の術式かどれにせよ

術式を貰えば、未来は広がるしさっさと僕に術式を与えてくれ!)

と、そんな失礼なことを考えていた。

しばらくして、神父が

「神託が下りました。」

それを聞いてキリアの内心のテンションのボルテージは最高潮に達していた。

(さぁ、教えてくれ僕の術式を)

「では、伝えます。」

(さぁ、こい)

「......せん」

(......ん、なんて?)

「キリア=シューベルトの術式はありません!」

「は?」

キリアが何を言っているのかわからないと言う顔をしていると後ろからラインハルトが

「間違いということはないのかい!」

焦りながら神父に問いかける。

「神の神託は絶対です。間違いということはありません。」

その瞬間に僕の顔と家族の顔が青ざめていくのを見ずとも感じた。


それからどうやって家に帰ってきたのかも覚えていない。家族とも話をあれから一切していない。

部屋に戻ると僕は膝から崩れ落ちて泣き喚いた。それほどまでに術式というものは絶対であったのだ。そして時間が経ち泣き疲れていると急に部屋の扉が開いた。

「キリア、明日約束通り魔の森に行って魔獣を借りに行こうか」

お父様は優しい笑顔でそう告げてきた。

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