第2話 転生

12時を過ぎた頃、暗い夜道にぶつぶつと独り言を呟いているひとりの男(佐竹周斗)が歩いていた。

「あんのクソ上司無茶苦茶すぎるだろ、働かせるだけ働かせて自分がミスしたら、おれになすりつけておれをクビにしやがって」

(ほんっとに昔から俺って何にも恵まれないな

親は俺を捨てて蒸発し、引き取られた親戚からは虐待、それで児童保護施設に入れられ学校の同級生や先生から向けられるのは憐れみの目、あれはマジできつかったなー。全員愛想笑いしてくるんだもん。だまったもんじゃなかったなー。それだけじゃなくほんとに何も才能なかったしな。勉強もスポーツも。まぁそんな過去のことよりも次の仕事探さないとな。貯金もろくにないしまじ死んじまう。)

周斗がそんなことを考えていると

「今日のさー         がさー           

マジやばかったよねー」

「それなーマジやばかったー」

話の内容が何にも入ってこないが信号を挟んで前からギャルのJKが歩いてきた。

(こんな時間に、一体何してたんだ。)

スマホをいじりながらチラチラとギャルを見て信号が青になるのを待っていると

「ちょ、信号、赤だよ」

「大丈夫だって、もうこんな時間だしこんなとこ車なんて通らないって」

そんなことを言いながら渡ろうとするJK

(オイ、そんなフラグを立てるな。)

そんなことを思っているとトラックが曲がり角を曲がってこっちに突っ込んできた。

(ほら、見ろ。言わんこっちゃない。まぁどうせこれ以上生きていてもしゃーないし助けるか。)

そう思い全速力で走ってJkを突き飛ばした。トラックはスピードを落とすことなく全速力で突っ込んでくる。

(じゃあな俺の人生。もうちょいマシな人生生きたかったな。)

そう思いながらゆっくりと目を閉じた。




だがいくら待っても痛みが来ない。

(は?なんで?なんの衝撃もこやんのやけど)

そんな自殺願望ぽいことを考えていると

「さっさと目を開けてもらっていいですか?話しかけづらいんですが。」

とそんな声が聞こえてきたので恐る恐る目をあけると、周りの時間が止まったように動かなくなっており、自分の体も空中で止まっていて目以外は何一つ動かせない。

(どう言うことだ。なんで死んでない。てかなんで動けない。)

「今は、そう言うことどうでもいいんで話聞いてもらっていいですか?」

(誰だこいつ、こんな偉い人が着てるようなスーツを着て、なんかすんげー長いシルクハット被ってて顔見えないし、ん?てか今そう言うことどーでもいいつったか?俺は口に出してないぞ、ということは、

「はい、あなたが思っている通りあなたの心を読みました。ですので私に伝えたいことがあったらまぁ心の中で念じるなりなんなりしてください」

そう言ってそいつは俺の思考を遮ってきた。

(そう言うことか、ならまず質問させてもらう。お前は誰だ。そしてなぜ俺の前に現れた?お前の目的はなんだ)

「思っているより冷静ですし質問が多いですね。まぁ一つずつ答えていきましょうか。まず私は人間界でいう神です。そしてあなたの前に現れた理由ですが、ざっくりに言うとあなたを異世界に転生させるためにきました。」

(ん!転生ってあの転生か!)

「はい、その転生ですが。」

(マジで?) 「はいマジです」

(いよっしゃー!マジか!最高だぜ!!助けた甲斐ってもんがあったぜ!)

体が動けば右腕を突き上げて踊り出しそうなぐらいに周斗は嬉しかった。なぜなら何を隠そうこの男は大の異世界系のラノベ大好き人間である。まぁそんな人間が転生できると聞けば大体こうなるだろう。

「まぁそう言うことなんでちゃっちゃっと手続き済ませちゃいますねー」

(チート、チートは!)

「はい、ほぼ絶対に無くならない魔力量と貴族の地位を与えときますね」

(よっしゃー!これで次の人生は勝ち組決定だ!これでこの人生にも意味があったってもんだ)

「はい、それでは今よりあなたの魂を異世界にとばしますね。向こうの世界は魔法が絶対の世界で一人につき最低でも一つ術式というものが与えられます。術式がなければ強力な魔法は使えません。術式は魂の形によって型取られつくられるのでせいぜい頑張ってください」

(おう!ありがとな神さま。この恩は一生忘れないからな。)

「えぇ、それではいってらっしゃいませ」

そう言って神は周斗の魂を異世界に送った。

すると周りの時間が動き出し魂のなくなった周斗の体が鮮血と共に飛び散った。神はそれを上空から見つめながら

「フフッ、面白いですねあの人、私のこちらの世界への干渉があったから、仕事をクビになり、挙句の果てには私のせいで死んだと言うのに、最後は私に感謝ですか、これから今よりも過酷で苦しい地獄が待っているとも知らずに、

あぁー待ちきれない彼のあの笑顔が歪み絶望の底に沈み切った時が楽しみですよ。ずっと観察させてもらいますよ周斗さん。最後まで私の遊びに付き合ってくださいよ。」

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