①中二病時代に捨てた〝黒歴史ノート〟が本物になって帰ってきた。

法螺依存

プロット

○参考作品

 特になし


○世界観/あらすじ

 舞台は現代日本。一般には魔術・異能の類いは存在しないことになっているが、裏では魔術や異能などの特別な力を持った存在が暗躍している。

 元・中二病患者の高校生、黒地明人くろちあきひとは本物の魔術や異能とは無縁の家で育った平凡な人間。中学卒業と共に中二病を卒業した彼は、中学時代には体験できなかった人並みの青春を送るため、高校ではとにかく普通で平凡な日々を過ごすことを目標としている。

 そんなある日、彼のもとにかつて捨てたはずの魔導書、資黒歴史ノート〝深淵ノ理アルシエル〟が人格を有する『本物の魔導書』となって帰ってくる。

 アルシエルは言う――「今度こそご主人と世界征服を成し遂げるのデス!」と。

 丁寧にその申し出を断る明人だったが、そのへりくだった態度があまりに中二病時代とかけ離れていたせいで、アルシエルは「ご主人が偽人格ペルソナに乗っ取られている」と勘違い。乗っ取られたご主人を救うために、アルシエルは偽人格を消そうとする。

 もちろん、偽人格など存在しない。今の人格を消されれば、残るのは人格を失った廃人である。

 このままでは僕という人間が殺されてしまう――そう思った明人は、咄嗟に中二病時代の自分〝黒淵アギト〟を演じ、アルシエルのおかげで封印が解かれたのだと告げることで、窮地から脱することに成功する。

 しかし、それは『中二病を演じながら世界征服を目指さなくてはならなくなる』のと同義でもあった。

 そうして、人格を殺されないために中二病を演じる日々が始まった。過激な思考回路の魔導書〝深淵ノ理アルシエル〟に振り回されながら、明人は知られざる裏の世界へと足を踏み入れ、やがて彼の望まないままに裏社会で成り上がっていくことになるのだった。


○基本用語

魔術師メイガス

 呪文を用いて世界に干渉することで様々な現象を生み出す術を魔術と呼び、魔術を使うものを魔術師と呼ぶ。全世界に2万人ほどの魔術師がいるとされる。

魔術機関ユニオン

 魔術師たちを統括する、国連の秘匿組織。現代の魔術師はユニオンに所属することが義務付けられており、それに従わぬものは処罰・討伐の対象となる。

 魔術師たちを順位付けして世界ランクを公表したり、裏社会の秩序を維持するために魔術師の派遣活動を行ったりしている。ちなみに、世界ランク日本最上位は4位で、最下位は1万1,561位。 

魔女ウィッチ

 体内に〝悪魔〟を巣食わせている者。魔術師とは違い、悪魔から力を引き出したり体の一部を顕現させたりすることで魔術に似た異能を行使する。

 魔女はその名の通り女性しかなることはできない。それは、女性だけが他者を内包できる子宮という特別な臓器を持っているから。

 悪魔は親から子へと受け継がれていくが、もちろん男児では受け継げないため、悪魔によって女児しか妊娠できない呪いの刻印〝魔女紋〟を刻まれている。魔女紋はちょうど子宮のあたり、下腹部に入れ墨のような形で刻まれている。

 なお、妊娠によって悪魔が親の子宮から子供の子宮へ移動すると、親は魔女としての力を失う。

【悪魔】

 人には知覚できない異空間に存在するとされる魔力生命体。目的等は一切不明。

【魔女狩り】

 魔女を狩ること。魔女の絶大な力は魔術師にとって自分たちの権益を脅かす存在である。そのため、古い昔から迫害され、殺されてきた。

 近年では単に殺すのではなく捕獲することが推奨されている。これは、魔術機関が自分たちに都合の良い魔女を作って兵器として運用するためである。捕獲された魔女は強制的に孕まされ、生まれた子供は組織が取り上げて洗脳教育を施す。

 魔女ではなくなった母体は殺されるか、奴隷として払い下げられる。


◯主要キャラクター

【黒地明人(中二病ネーム:黒淵アギト)】主人公

 一人称:僕(アギトのときは俺)

 1.ビジュアル

 黒髪黒目の平凡な容姿。中二病時代の反動で目立つことを避けているため、前髪長めでうつむきがちであることが多く、陰気な雰囲気が漂っている。

 身長は大きくないが小さいと言われるほどでもない。(作中では正確な身長を明言しない。読者に自分の身長を当てはめてほしいため)

 2.性格

 本性は自分に自信がない事なかれ主義のビビり。

 しかし、〝黒淵アギト〟を演じるときには設定を守るためにクールで自信満々な俺様キャラ。

 3.主人公視点と裏社会視点、クラスメイト視点での〝アギト〟の見え方の違い

 主人公視点……滑稽な道化。

 魔術師や裏社会視点……謎めいたクールな少年。

 クラスメイト視点……スクールカースト最下位の陰キャ。


深淵ノ理アルシエル】サブ主人公&ヒロイン

 一人称:アルシエル 明人の呼び方:ご主人

 1.概要

 もともとは中二病時代の明人が書いた魔導書(笑)に過ぎなかった。捨ててから約一年経ったころ、本物の魔導書になって返ってくる。本人曰く、「都合が良い」ので魔術師のガキの死体を操って、自分の手足代わりにしている。

 深淵魔術、と呼ばれる唯一無二の魔術体系を操ることができる。

 2.ビジュアル

 小柄で華奢。黒髪ボブカット。イメージはマチルダボブ。肌は褐色。瞳は暗い穴のような色で、常に瞳孔が散大している。可愛らしい顔立ちをしているが、死者のため、よく見ると非常に不気味。

 3.性格

 主人公に忠誠を誓っており、主人公の言うことは素直に聞く。しかし、短絡的な思考回路の持ち主で、明人の考えを曲解することもしばしば。

 善悪に対する葛藤は持たず、自分がすべきと思ったことは悪事であろうと善行であろうと容赦せずに行う。


青灰せいはいのカエシア】ヒロイン

 一人称:私 明人の呼び方:マスター

 1.概要

 通称『青灰』と呼称される魔女である。現在、把握されている魔女の中で最も未熟な魔女とされ、魔女狩りに最適の獲物であることから、魔術機関から執拗に狙われている。

 魔術機関のハンターに捕まりかけたところで明人、もといアギトに助けられる。

 2.ビジュアル

 青みがかった灰色の長い髪と瞳が特徴的な絶世の美人。肌は透き通るような色白。背は比較的高く、プロポーションも非常に整っている。

 3.性格

 生まれてからずっと裏切られ、殺されかけ、拉致されかけてきたために、警戒心が強い。命を救われた明人に対しても全幅の信頼は置いていない。

 4.特徴

 幼い頃に親をなくしているため、母親から魔女の力の引き出し方などを教わる機会がなかった。そのため、正しい力の引き出し方が分からず、魔術の真似事をして身を守っている。そのため、現役最弱の魔女として狙われている。

 なお、『青灰』の二つ名は母親から受け継いだもの。

 5.内包悪魔

 内包されている悪魔は「イフリート」である。火の魔神であり、その姿は青炎に覆われた巨人だとされている。その力は強大で、本質を十分に引き出せれば、最弱どころか最強クラスの魔女になることができる素質がある。

 そもそも『青灰』という二つ名は、イフリートの高すぎる火力によってあらゆるものが一瞬で燃え尽きて、辺りに青い火の粉と灰が降り注ぐ様からつけられたものである。


○作品の文体・人称の設定

 基本的に『コメディテイストの一人称』で進行しますが、『シリアステイストの三人称』も併用しています。

 〝勘違いもの〟の要素を持つ本作では、主人公と他者のモノの見え方・捉え方がいかにズレているのかが面白さのポイントとなってきます。そこで、ズレを誇張する手段の一つとして、主人公視点での文体と他者視点での文体に大きなギャップを作っています。

 例えば、『プロローグ』では三人称の堅い文体であえてシリアスに書いていますが、『第一章』では一人称の軽い文体でコミカルに書いています。

 ただし、あまり頻繁に人称が変わると読みづらいと思いますので、他者視点・神様視点の三人称はアクセント程度の頻度にとどめます。イメージとしては『一人称=8~9割』で『三人称=1~2割』の想定です。


◯物語構成

全六章(三幕構成&ブレイク・スナイダービートシートを参考にしています)

メインプロットとサブプロットが同時進行する構成になっており、メインでは主人公とアルシエルの裏社会での活躍、サブでは学校で少しずつ青春を手に入れていく姿を描きます。

【序章】(五千字程度)

 裏路地でカエシアと魔術機関のエージェントの戦闘シーン。ピンチのタイミングで突如現れた黒尽くめの少年、アギトがカエシアを救う。

 ニヒリスティックでハードボイルドな雰囲気の中、アギトはカエシアを自分の仲間へと引き入れる。カエシアは警戒しつつもそれを受け入れる。

   ***

 公園のトイレに篭り頭を抱える明人。少し前まで演じていた中二病時代の自分〝黒淵アギト〟のを思い出して赤面しながら、こんな訳の分からない事に巻き込まれてしまう原因となった日を思い出す。

 

【一章】(二万字程度)

 時は数日前に遡る。明人のもとへ中二病時代に捨てた黒歴史ノート『深淵ノアルシエル』が返ってくる。魔術師の女の子の死体を操り人形にしている。

 アルシエルは世界征服を目指そうと言ってくる。しかし、明人はそれを固辞する。

 明人は中二病によっていろいろなものを犠牲にしてきた。友人も恋人もおらず、親には沢山迷惑をかけた。だから、中二病は卒業した今は何よりも〝普通の人〟でありたいと考えていたのだ。

 そんな彼の様子を見て、アルシエルは彼が何者かに体を乗っ取られているのだと思い込み、明人の人格を消そうとしてくる。明人はとっさに中二病時代の自分を演じることでアルシエルを騙して助かる。しかし、そのせいでアルシエルと一緒に世界征服を目指すことになってしまうのだった。

【二章】(三万字程度)

 時は戻り、序章の翌日。明人のもとにカエシアがやってくる。理由は明人に仕えるためである。勝手にアルシエルが差配しており、明人の知らぬ間に同棲が決定してしまっていた。

   ***

 学校へ行く。学校は彼が唯一心安らげる場所となっていた。アルシエルにはきつく言って、学校にはこさせていないからだ。

 彼の現状はスクールカースト最底辺の陰キャボッチであるが、この現状を良しとはしていない。まずは友だちを作りたいが、そのきっかけが作れずにいる。

 そんな彼にチャンスがやってくる。ホームルームで六月の林間学校に向けた班分けを行うことになったのだ。林間学校では班で共同作業を行う。自然と会話も増え、仲も深まっていくに違いない。初めての友達をつくるぞ、と意気込むが、班分けであぶれてしまい、担任からの指示でスクールカーストトップの班に無理やり入れられてしまう。班員からは嫌そうな顔をされるし、明人としてもハードルが高すぎるしで最悪。それでも、明人は気合を入れ直して、林間学校へ挑むことを決意する。

   ***

 自宅に返ってくると明人の母親と和やかに夕食の支度をするカエシア。両親はすでにアルシエルによって洗脳済みで、カエシアとアルシエルはホームステイに来ていることになっている。

 食事を取って眠ろうとすると、部屋に薄着のカエシアがやってくる。彼女は下僕なら当然である、という理由で夜伽をすると言い出す。明人はつい欲望に流されそうになるがなんとか踏みとどまり、カエシアを自分の部屋へ戻す。

 部屋に戻ったカエシアは。実はカエシアは、明人が魔術機関の敵を装ったスパイエージェントで、彼女に味方のフリをして近づき懐柔し、油断したところで魔術機関に明け渡す、あるいは孕ませて生まれた子供を奪い取るつもりではないかと考えていたのだ。夜這いはそれを見定めるためのテストのつもりだった。

 もしも、明人がエージェントなら、夜這いをかけにきたカエシアをそのまま帰すことはなかったはずだ。そのため、カエシアは彼への信用を高めたのである。

   ***

 深夜、アルシエルが「警戒網に引っかかった侵入者がいる」と言い出す。

 三人で迎撃に向かう。序章で戦ったのとは違うエージェント二人と戦闘になる。苦戦しつつもなんとか撃破する。

【三章】(三万字)

 場面が変わり、魔術機関の会議室でカエシアと謎の魔術師(明人のこと)が議題に挙げられる。

 そして、敵の脅威が大きいことから、個別出撃ではなく、部隊による全力出撃が提案される。最弱だからこそ狙っているカエシアに全力出撃するのは本末転倒ではないかという声もあったが、沽券に関わることだからということで承認される。

   ***

 林間学校が始まる。終始ハブられて、理想の林間学校にはならず、途方に暮れる明人。

 そんな矢先、キャンプに来ていた酔っ払いの大学生数名からナンパされている班員女子〝相良飛鳥〟を見かける。彼女は見た目がかなり遊んでいるようにみえるからか、大学生たちも狙い目だと思ったらしい。迷惑そうにする相良だったが、そんな彼女に大学生たちは逆上。無理やり自分たちのテントへ連れ去ろうとしだす。

 明人は反射的に相良を庇う。最初は怖い気がしたが、これまでにそこそこの修羅場をくぐってきていた明人はすぐに慣れ、それどころか威圧することで追い返してしまう。

「助けてくれてありがとう。見直したよ」

 相良に見直して貰い、明人は初めての友人を手に入れる。

   ***

 意気揚々と帰宅する明人。すると、家の中が荒らされている。床に倒れていた母親に事情を聞くと、突然複数の黒尽くめが入り込んできたのだと言う。そして、カエシアとアルシエルを攫っていったと言う。

【四章】(三万字)

 自分はどうすべきなのか悩む。このまま見ないふりをすれば自分は元の生活に戻れるのではないか、と。学校でも相良という友達が出来た。普通の人に戻るなら今しかないはずだ。

 大体、アルシエルのいない自分に何ができる? 自分が探しに行ったとして見つけられるとも思わないし、よしんば見つけられたとしても勝ち目なんてないじゃないか、と。

 ついには忘れることを選択してしまう。

   ***

 組織の施設内で捕まっているアルシエルとカエシア。敵に諦めろと言われるが、明人が絶対に助けてくれると信じる二人。

   ***

 場面は明人のもとへ戻る。忘れることにしたはずだったのに、どうしても忘れることなど出来ない。そんな時、ふと相良が言った「助けてくれてありがとう。見直したよ」という言葉を思い出す。

 ここで逃げてしまったら、相良に対しても嘘をつく事になってしまう。それに、なんだかんだ言って、アルシエルもカエシアも、認めたくはないが自分にとって友人だったのだと気がつく。

 決意を固めて家を飛び出す明人。

   ***

 敵のアジトを見つける。ボロボロになりながらも敵に立ち向かい、ついにはアルシエルとカエシアのいる部屋へ辿り着く。

 アルシエルとカエシアは封印装置で力を制限されていたが、明人がすきを見てこれを破壊する。

 これまでのただの演技ではなく、このときばかりは中二病時代の自分に戻った明人。

 三人で敵のリーダーを打ち倒す。

【終章】(五千文字)

 日常を取り戻した三人。最初に明人が求めていた青春とは違ったけれど、こんな日々も悪くはないかもしれない。そう思う明人だった。

(END)

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