第5話 爽快
彼らはいつものように僕を詰る。詰られながら閑話休題。
こんな学校で大切な一日を無為に過ごすのは実に勿体無い。
こうやって聖痕を抱くか、汗牛充棟で哲学書や文学全集、特に江戸川乱歩全集を漁っているほうがずっと有意義だ。
帰宅すると部屋の片隅で僕を待っていた空蝉が喚き、包丁で僕は僕を脅し、僕は土壇場で餌食と化すのにさ。
誰とも縁のない空蝉にとっては食後のデザートのゼリーのつもりだろう、クリームを残さず舐めるかのように僕が望む花芯を舐める。
毎日やってよく飽きないのか、苦笑いをしたくなる。
僕はその件をひとまず置いて、硝子のコップに溜まった赤い液体を見た。
穢れた大地から滲み出た血の涙が僕を癒してくれる。
僕はこの澄み切った液体を口付けしようと硝子の表面に触る。
爽快。
この花芯から僕の穢れた体内を日に日に癒してくれるようで。
綺麗だ。綺麗だ。綺麗だ……。
そんな君。
君のように血脈で美しくなった空蝉の君はね、と僕は失笑を堪える。
身体中に微熱を帯び、空蝉が僕らを蔑ろに死へと催促されるが、僕にはその選択は無意識だ。
勝手に秘奥から溢れ出る、事後、汚れた下着を始末するのも面倒。
あのニイニイ蝉が脱皮を終え、成長した蝉が咬合し、新たに生命を宿し、朽ちていくと想像し、何となく、哄笑したくなる。
あの赤い臭い液体が身体にこびり付く。
元来、空蝉の孤閨から僕は呑まれるのだ。
任務を忘れて空蝉は不吉で染まった僕の傷を舐めて舐めた。
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