机の中にしまっていた想い

ネズミ

机の中にしまっていた想い


FES 22

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生まれて初めて、好きと言われた。 


それは今でも机の中に眠っている。



小学生のときに少年自然の家で13泊14日するというイベントがあった。そのイベントには小学生から高校生までの少年少女が参加していた。


振り返ればその時が唯一のモテ期だったのかもしれない。モテ期は3回あるみたいなことを聞くが、それ以降待てど暮らせど訪れる気配はない。


それにモテたといっても所詮小5のガキだ。年上の女の子にかわいいと言われて、何人かと文通をしただけだ。だけど、僕にはその時間が必要だった。


相手から手紙が来るのが嬉しくて、ポストを確認するのが日課になっていた。


手紙は書くのも貰うのも好きだ。手紙を書く時間はその相手のことだけを考えている。相手も僕のことを考えて書いてくれているはずだ。


僕が文章を書くのが好きなのも、あの頃文通をしていたからだと思う。

手紙からメールになり、それからラインやTwitterに姿を変えて、今もこうして文章を書いている。

あの時間がなかったら、物語は書いてなかっただろう。


1つ年上の女の子とは多分2年のくらいやり取りをしていたと思う。その子から人生で初めて好きだと言われた。(いや、書かれたというのが正解か。)僕もその子が好きだった。


同じ県内だが、小学生の僕には会いに行ける距離ではなかったので手紙のやり取りだけだった。


調子に乗って、「俺彼女出来たんだ」と言って彼女が手紙に同封してくれたプリクラを友達に見せびらかしていた。


 


『好きな人ができたんだ。部活の先輩でカッコいいんだよ。あ、だけど君のことも好きだよ。だから君が良かったら私のこと彼女って思ったままでいいよ』



その手紙には返事を書かなかった。それが初めての失恋だった。



引き出しには多くの手紙が残っている。その子のだけではなく、今までもらってきた手紙全て取ってある。未練があるというわけではない。



手紙を書いているときは、その人のことだけを考えている。想いの結晶だ。だからこそ、それらを捨てられずにいる。

 

口下手やから上手いことは言えない。言葉足らずで相手を怒らせたり、不快にさせてしまった苦い思いは嫌というほどしてきた。

だけど、文章だったら書いたり消したりを繰り返すことで自分の言いたいこと、伝えたいことに近づけることができる。


僕が物語を書くときは、誰かに面白いと思ってほしいとは思っていない。ある人を想定して、その人に想いを届けたいと思って書いている。


手紙とは違って、その人が読んでくれるわけではない。だけどそう思って書いている。僕の文章を書く原点は、あの頃の文通だから。

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