第89話

 わしは今、満足している。このうえなくりている。

 わしが教えられる事は全て教えた。それをどう使うのかは由香里自身が決めること。どんどん変えてもかまわぬ。なんなら武術をててもかまわぬ。由香里がこの先、どういう道をくのかはわからぬ。光あふれる道を進むのかもしれぬ。おだやかなだまりをのんびりあゆむのかもしれぬ。やみちるのかもしれぬ。

 だが、忘れるな。どんな道をこうとも、どんな由香里になろうとも、由香里はわしのいとしい弟子だ。

 わしはもうくが、由香里に愛情とツッチーをのこしてゆく。

 ツッチーは、わしと弟子との間の伝令係として案内係として、わしが土をこねて作った物だ。わしの親友にせて作ったが、所詮しょせんはただの土のかたまりにすぎなかった。由香里はそれにツッチーという名をつけ、愛情をそそいだ。すると、ツッチーに心が生まれ、たましい宿やどった。ツッチーはもう土の塊ではない。ツッチーは自分の意志いしで由香里の中に残ることを選んだ。わしもうれしい。

「アズキ、ツッチー、由香里を頼むぞ」

 ナルシィは、アズキとツッチーを見て、うなずいた。そして由香里の頭を優しくなでると、れやかなみを浮かべた。

「由香里にありったけの愛情をこめてゆく」



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