第3話

 あたたかい……。

 由香里はぬくぬくと意識を取り戻した。心地ここちよい布団の中で、もう少しこのまま、まどろんでいたかった。

 ズキン! 右肩に痛みが走った。なぜか体のあちこちが痛い。ケガをした覚えなんか……ある。白い壁に右肩から突っ込んだ。裸で壁に激突して裸足はだしで外を走ったのだ。体中、り傷、切り傷、打撲だぼくでも、おかしくはない。でもそれは夢の中。

 由香里は目を開けた……。

 木目もくめの天井が見えた……。ここは私の部屋じゃない! 見知らぬ部屋。由香里は、ふかふかのベッドの上に横たわっていた。

 右肩をかばいながら、そろそろと体をおこす。体がだるい。痛い。そして少し息苦しい。かすかな耳鳴り。体のあちこちに包帯が巻いてあった……。

 どうやら夢ではないらしい。体がすうーっと冷えてゆく。身に着けているのは、だぶだぶの無地白Tシャツ一枚。たけは太ももなかば。下着なし。裸よりはマシだけど。……アズキは無事だろうか?

 ここはどこ? 由香里は茶色い部屋を見回した。

 壁も床も天井も木目。木造の部屋の中は明るかった。窓も照明もドアもない。部屋の中にはベッドがひとつ。枕元まくらもとには真っ白な小冊子しょうさっし。手に取って少し躊躇ちゅうちょして、由香里は冊子さっしを開いてみた。

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