晴天に死にゆく

空殻

#

六月。梅雨の季節。

今年は特にひどい。毎日曇り、雨が降っている。

最後に直接太陽を見たのはいつだろうか。


そんな六月の下旬、私は吸血鬼に出会った。


不健康そうな顔色の彼は、公園のベンチで隣に座った私に、自らそう名乗ったのだ。

そんな話を信じたわけではないが、退屈していた私は、彼の話に乗ってあげる。


「吸血鬼なのに、昼に出歩いてもいいの?」

「もし晴れて、日光で死んだら、まあそれもいいかなって」

「どうして?」

「生きることに、疲れたからさ」


それからもしばらく、毎日が曇天。

公園を通りかかると、彼が座っていた。

私はもう声をかけない。


六月末日。晴れ。

彼の姿は無かった。


彼を置き去りに、梅雨が明ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

晴天に死にゆく 空殻 @eipelppa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説