あやかしの四つ子

市野花音

第一章 日常・出会編

第1話 嫌な朝

 嫌い、嫌い、全部嫌い。

 少し古びた校舎の匂い、カツカツと黒板をチョークで叩く音、人の雑音も、全部全部。

 「あっ、鬼月きづきさんたちだ」

 「鬼月姉弟キター!」

 「ちょっと、鬼月様って呼ばなきゃよ!ファンクラブがうるさいんだから」

 「あれ、うるさいのは親衛隊じゃなかったっけ」

 「ああ、ファンクラブのやつらは静かにみ守ってるんじゃなかったっけ?」

 「それって、会の方でしょ?」

 「は、会まであんの?」

 「鬼月様やばすぎ。」

 五人ほどの男女が、私の歩く少し先で固まって話している。

 でも、わたしが近づくとさっと脇によけた。

大名行列か。

 「やばいはな様、マジで美少女なんだけどマジで」

 あーあ、鬱陶しい。早くつかないかしら。

 いらつきながら、足を早める。

 ああ、やっと見えてきた。

 私立しりつ秋根あきね高校の正門。

 そこは、私たちにとっての伏魔殿ふしまでんだ。

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