第3話『ステータスとそれぞれのジョブ』

 それから王様や重役達の胡散臭さは残っているものの、帰れないのならばこの国で生きていかなければならないのかもしれないという結論になった。


「わかりました、我々の身の安全と衣食住の保証、仕事に見合う給金とこの世界で生きていくために必要な知識……あとは必要に応じてご相談になるかと思いますがそれらの継続的な援助をいただければ協力してもいいかと思います、みんなそれでいい?」


 私は左隣に座っている弟達に問いかける。


「オレは小難しいことはよくわかんないから姉ちゃんに任せるよ」


「ボクも陸斗と同じでいい」


「ぼくも〜」

 

 陸斗の発言に遥斗が同意し、奏音も可愛く声を上げる。


「正直無理やり拉致されて腹は立つけど、起きてしまったことは仕方ないかなとは思うから私もそれでいいよ」


 星夜が同意する。

     

「蒼汰もそれで構わない?」


「あぁ大丈夫だ」


 全員が私の意見に賛同する。


「よろしいでしょうか陛下?」


「うむ、強大な魔王さえ退治してくれるならばその程度の要求など問題ない」


 あごひげを撫でながら国王が同意した。

 

「ではそのように調整いたします、さて皆様のご理解をいただけましたので、勇者様方のステータスの確認をさせていただきたい」


 パンパンと宰相が手を叩くと透明度の高い水晶玉の乗った台が彫刻の施された豪華な台車に載せられて運ばれてくる。


「ここからはスプランドゥール女神信教の枢機卿であるゲランド枢機卿にご説明いただきます。ゲランド枢機卿よろしくお願いいたします」


 そう言って宰相が、説明の場所を譲ると黒衣の

のカソックと呼ばれる司祭服を纏った良く言えば大変ふくよかな男性が出てきた。


 司祭服の上赤い帯が左右に垂らされており、びっしり文字なのか模様なのかわからない刺繍がほどこされている。


 後で星夜に聞いたところ、階級を示す色違いのストラという名前の装身具らしく神聖な古代語の刺繍をあしらったストールのようなものらしい。

 

 このスプランドゥール女神信教の司祭は黒、司教や主教は赤紫、ゲランド枢機卿のように枢機卿は赤、一番偉い教皇は白色のカソックと白に金色の刺繍のストラを着ることになっているそうだ。


 白かぁ、よごしたら洗濯するの大変そう……この世界には塩素系漂白剤があるのかな……まぁ洗うのは私じゃないからいっか。

  

「これはステータスを確認するための装置になります、こちらに魔力を流していただき女神スプランドゥールへ魔力奉納していただきますと次回以降は御自分で『ステータスオープン』と発言していただければ確認できるようになります」


 その説明にいても立っても居られなかったのか陸斗が「ステータスオープン!」と言って蒼汰に頭をベシッと叩かれている。

 

「申し訳ございませんでした、どうぞ続けてください」


 蒼汰が笑顔で謝罪し促すと、一瞬面白くなさそうな顔をしてフンッと偉そうに鼻で笑う。


「これだから異世界人は……もう良い! ひとりずつその水晶玉へ触れよ」


 慇懃無礼に言い捨てたゲランド枢機卿がそう言うと、台車を押した部下らしき人が星夜へと近づいた。


「さぁ星夜様! こちらへ手を触れてくださいませ!」


「なっ、やめろ!」

 

 ぐいぐいと強引に星夜の手を引っ張って王女が、手のひらを水晶玉に乗せると、ピカッと水晶玉が光り輝き光のスクリーンを映し出した。   

【三ツ塚星夜(みつづかせいや)】 

 13歳 (♂) 状態異常ナシ

 ジョブ(職業) 『賢者』

 体力  248 

 魔力  624

 かしこさ 842

 魔法適正 氷魔法

 スキル(特殊技能)  見聞(Level 3) 寒波(Level 2) 解析(Level 2) 鑑定(Level 1) 叡智(Level 1) 並列思考(Level 2) 異世界言語(Level 2)


「おー! 星夜兄ちゃん賢者様だ! すげー!」


「すげ~」


 陸斗と遥斗がキラキラとした視線を星夜へと、向けている。


 弟たちにからの称賛はやはり少し恥ずかしいのか冷静を装いながら星夜がデレている。


「このように水晶玉を使用した場合、皆に可視化したステータス画面が見られるように投影されます。 次回以降は水晶玉を使用せずにステータスの確認ができますし、他者へ公開するかどうかは自分で設定できますのでご安心ください」


 その説明を聞きながら、どうせなら一回目も情報を秘匿できるようにしてほしいと思うのは私だけだろうか?

 

 続いて台車が移動され蒼汰が水晶玉へ手を伸ばすと星夜のときと同じような光を放ちスクリーンを映し出した。


 【三ツ塚蒼汰(みつづかそうた)】 

 15歳 (♂) 状態異常ナシ

 ジョブ(職業) 『聖人(回復系)』

 体力  369 

 魔力  648

 かしこさ 546

 魔法適正 光魔法

 スキル(特殊技能)  回復魔法(Level 3) 自己回復小(Level 2) 診察鑑定(Level 2) 解毒魔法(Level 1) 調薬、製薬(Level 1) 鑑定(Level 2) 異世界言語(Level 2)


「おー!」


 蒼汰のステータス画面に教団関係者がどよめいた。


「ソウタ様! ぜひとも我がスプランドゥール教団へ!」


「お断りします、私は家族と離れるつもりはありませんので」


 そんな声をピシャリと蒼汰が断る。


 蒼汰が教団関係者と話をしているのを無視してワクワクとした顔で陸斗がニヤリと笑い水晶玉を遥斗との間に持ってくる。


「遥斗、一緒にさわるぞ?」


「うん、分かった〜」


 陸斗の言葉に遥斗がまったりと同意すると、同時にペタリと水晶玉に触れる。


 光を放ち2つのステータス画面が浮かび上がる。


 【三ツ塚陸斗(みつづかりくと)】 

 10歳 (♂) 状態異常ナシ

 ジョブ(職業) 『魔導師(5大要素)』

 体力  462 

 魔力  894

 かしこさ 246

 魔法適正 火魔法、水魔法、木魔法、風魔法、土魔法

 スキル(特殊技能)  火魔法(Level 3)  水魔法(Level 2) 木魔法(Level 1) 風魔法(Level 1) 土魔法(Level 2) 魔力回復小(Level 2) 異世界言語(Level 2)


【三ツ塚遥斗(みつづかはると)】 

 10歳 (♂) 状態異常ナシ

 ジョブ(職業) 『魔導師(光、闇)』

 体力  262 

 魔力  994

 かしこさ 216

 魔法適正 光魔法、闇魔法

 スキル(特殊技能)  光魔法(Level 3)  闇魔法(Level 3) 魔力回復小(Level 2) 異世界言語(Level 2)


「ひゃっはー!魔導師きたー!」


「きた~!」


 いぇ~いと言いながら仲良くハイタッチをしている二人のステータス画面を見ながら他の魔導師達があんぐりと口を開けてしまっている。


 他の魔導師の人達のステータスを見たことがないからなんとも言えないけれど、きっと召喚されてきたときに何かしらの補正が掛かっているのだろう。


「ねぇちゃん次はぼく?」


 膝の上で奏音が私を見上げながらこてりと首を傾げる。


「そうだね、お姉ちゃんは後でいいからかなちゃんがやってみようか?」  


 どうやら楽しみに順番が来るのを待っていたのだろう、目の前に運ばれてきた台車の上……奏音の顔と、さして大きさが変わらない水晶玉をツンツンと指先でつついている。      

   

「うん! えいっ!」


 可愛いボーイソプラノで気合を入れて、ペタッと奏音が小さな掌で水晶玉へ触る。


 

【三ツ塚奏音(みつづかかなと)】 

 5歳 (♂) 状態異常ナシ

 ジョブ(職業) 『勇者』

 体力  162 

 魔力  494

 かしこさ 242

 魔法適正 火魔法、水魔法、木魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法

 スキル(特殊技能)  火魔法(Level 3)  水魔法(Level 2) 木魔法(Level 1) 風魔法(Level 1) 土魔法(Level 2) 光魔法(Level 2) 闇魔法(Level 1) 魔力回復小(Level 2) 体力回復小(Level 1) 異世界言語(Level 2)


「ゆ、勇者様だ!」


「すげーじゃん奏音! 勇者だ勇者!」


 奏音のステータスに歓声が上がる。


 彼らが異世界から召喚したかった勇者が確定したのだから喜びと安堵の歓声だろう。


 ゲームやアニメ、漫画などでしか見たことがないから勇者の登場で興奮のあまり椅子から立ち上がった陸斗が私の膝の上から奏音を抱き上げてその場でぐるぐると回りだした。


「こら、危ないからやめなさい」


「陸にぃちゃん、かなちゃん凄い?」


「おう!流石オレの弟!」


 キャッキャと騒ぐ二人は見事に同室している方々の注目の的だ。


「それでは最後になりますが、よろしくお願いいたします」


 ずいっと私に差し出された水晶玉に手を伸ばした。      


「賢者に聖人に魔導師ときて勇者でしょ、姉ちゃん聖女なんじゃね?」


「聖女?」


 いや、聖女とかガラじゃないのですが。


「聖女よりどっちかって言ったらアマゾネスじゃね?」 


 自分から聖女とか言ってきた陸斗は自分で言って違和感があったのか人を女戦士(アマゾネス)だと言うので、笑顔で立ち上がり陸斗の両こめかみに両手の中指を突き立ててぐーりぐりとマッサージをしてあげる。


「だーれーがーアマゾネスだってぇ?」


「うぎゃー!痛い痛い」


「またやってるよ、陸斗は懲りないねぇ」


「陸にぃー仲良しねー」 


 私達を呆れた様子で見ていた星夜が口を開くと、奏音が同意する。


 私達の様子を見ていた人達が呆気に取られていた。   


「さて、それじゃあ確認しますかね」


 私は目の前にある水晶玉へと右掌を乗せる。


 アマゾネスだろうか聖女だろうがどんと来い! 

 

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