成長
お兄さんが気を遣って、他のみんなを少し遠くで遊ばせているのを確認してから、お姉ちゃんは10秒数えた。
「よーいどん!」
小晴はいつものように、走って逃げた。隆太郎はというと、座っていた状態から立ったが、そこから動けなかった。お姉ちゃんは、隆太郎の横を通り過ぎて小晴にタッチした。
「こはるちゃん捕まえた!こちょこちょ…」
「はははっ!やーめーて!」
「分かった!やめるよ!」
お姉ちゃんがくるっと振り向いて、隆太郎に照準を合わせようとすると、対象がいない。すぐ後ろで足音がした。後ろを向かずに、両手を背中側に伸ばすと、何かが後ろに下がるのを捕らえた。
「りゅうくん見ーっけ!笑顔が素敵だね。いいかい?」
隆太郎は、はにかんで小さくうなずいた。もうすでにお姉ちゃんの近くまで動けている。でも、今そこを褒めても間が悪いのであとにして、お姉ちゃんは構えた。
「よーい…まだだよ…どんっ!」
お姉ちゃんが隆太郎をくすぐると、隆太郎は体をひねったりしたが、耐えきれなくなって、後ろに一歩下がってそのまま逃げた。それは一瞬だったかもしれない。でも、お姉ちゃんも隆太郎も、隆太郎が成長したのを感じた。お姉ちゃんは嬉しくなって、
「もうしないよ!ノート持って戻っておいで!」
と言った。
「りゅうくんと話したいから、こはるちゃん、お兄さんの方に行けるかな?」
「うん。」
「ありがとう。行ってらっしゃい!」
なぜか手を振って別れる。隆太郎が戻ってきた。
「さーてと。まずは…私が楽しかった。りゅうくんも楽しかったなら、いいな。」
『楽しかった』
「遊べてよかったね。全部、りゅうくんの力だよ。また遊ぼうね。」
隆太郎は笑って首を傾げる。
「えっ。また遊んでくれないの?なんでー。」
と言いながら、お姉ちゃんは隆太郎の肩を持って揺らした。無抵抗で揺れている隆太郎が愛しい。
お兄さんの声が聞こえる。
「みんな、お昼寝の時間だよー!」
そうだった。忘れていた。お姉ちゃんは、「やったー!」と喜々として寝転んだ。しかしお兄さんに、「お姉ちゃんは見守る方だよ。」と言われて落胆している。みんな笑った。
遊び疲れて、全員が一瞬で寝てしまった。
30分後、ぐっすり寝ていたみんなは優しくお兄さんとお姉ちゃんに起こされた。
「まだ遊ぶ?それとも帰る?」
お兄さんは聞いて、眠たくて反応が遅い子供たちに多数決を促した。
「まだ遊びたい人!」
だいたいの子が手を挙げた。
「じゃあ円になって。丸くなって座って。りゅうくんも、座りな。どこでもいいよ。お姉ちゃんも入っていいから、隣にりゅうくんも入れてあげて。」
「緊張する?多分、大丈夫だよ。見てるのも暇になるし。うん。座ろう。よし。」
「ちょっと動くから、手だけぶらぶらしよう。ぶらぶらー。りゅうくん、できる?」
お姉ちゃんは隆太郎の手を持って振ろうとしたが、結構な力で握られていて、手が開かない。お兄さんが言う。
「りゅうくん、どきどきだね。じゃあさ、何するのか1回目だけ見てて、その次からできそうなら入ろう。それでいい?」
うん。いいよ。
「顔にいいよって書いてあるね。よかった。ならこっちおいで。」
隆太郎は、1人でお兄さんの方に行けた。
「"なーべーなーべーそーこぬけ、そーこがぬけたらかえりましょ"で表と裏を逆にするよ。分かるよね。僕は何も言わないから。人数が多いけど、頑張れ!」
手を繋いで、歌を歌って、2回ひっくり返ったあと、お兄さんが隆太郎を輪に入れた。お兄さんと2人で、準備体操はしてあったので、お姉ちゃんと小晴の間に入れてもらった。
また歌ったり、みんなで動いたりして、あっという間に時間が過ぎた。帰る時間になると、靴を履いて、たくさん話しながら帰った。
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