ばかばっか

そうざ

The Stupid People

「お電話ありがとうございます。こちら××テレビ・カスタマーセンターでございます」

「あー、もしもし。ついさっきお宅の番組を観てたんだけど、Kってタレントが、世の中、馬鹿ばっかでしょ、って言ってたよね。あの発言は戴けないな。視聴者をバカにするのはどうかと思うよ」

不躾ぶしつけではございますが、貴方様はご自分の事を馬鹿だとお思いでいらっしゃいますか?」

「はぁ? 馬鹿じゃないよ、失礼なっ」

「でしたら何がご不満なのでしょうか?」

「……何?」

「Kさんは世の中に蔓延はびこる馬鹿に対して物申していると思うのですが」

「何が言いたいんだ?」

「つまり、貴方様個人を特定して発言している訳ではないのです」

「俺の事は兎も角、他の視聴者はきっと不快な思いをしてるよ」

「貴方様以外の方からは苦情を頂いておりませんが」

「頂いてなくたってねぇ、人を馬鹿呼ばわりするのは――」

「もし、ご自分に対する発言だと感じられた方がいらっしゃるとすれば、その方はご自分の事を馬鹿と自覚していらっしゃる事になりますし、ご自分に対する発言だと感じられなかった方は、ご自分の事を馬鹿と思っていらっしゃらない事になります。つまり、Kさんは厳然たる事実を指摘しただけという事になります」

「……あのな。俺が言いたいのは、馬鹿じゃない人が馬鹿と言われたら心外だって事で」

「ご自分の事を馬鹿と思っていらっしゃらない方は、むしろKさんの発言に共感されるのではないでしょうか。Kさん、よく言ってくれたと」

「それはっ……そういう人も居るかも知れないが、例え馬鹿な人に対してでも馬鹿呼ばわりするのは――」

「人を馬鹿呼ばわりする方は馬鹿なのでしょうか?」

「……あの、だから、そういう話じゃなくて、世の中には馬鹿も居るだろうけど、そうじゃない人も居るって事をだね」

「念の為もう一度確認させて頂きますが、貴方様は馬鹿ではないという事で宜しかったでしょうか?」

「バッ、馬鹿じゃないってさっきも言ったろっ、お前は馬鹿かっ!」

「因みに貴方様は世の中、馬鹿が多いと思っていらっしゃいますか?」

「ああ、思うねっ、お前みたいな馬鹿がいっぱいで困るよっ!」

「でしたら、Kさんの発言は正しいのではないでしょうか?」

「……あ」

「お電話ありがとうございました」

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ばかばっか そうざ @so-za

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