第15話 ハルに彼女!?
12月12日(日)
AM6:30
『おはようスタンプ』送信。
今日は、一日家にいた。ハルからのリクエストのクッキーを作ったり、年賀状のデザインを考えたり、映画を見たり。
ハルとは、『今日は、もう歩いてる?』『歩いてる』というラインだけ。
12月13日(月)
AM5:00
『おはようスタンプ』送信。
AM8:00
ハルからライン。
ハ:『今日、ふりかけ持って来て。10個くらいあれば足りる』
私:『了解。バスタオル、下着、Tシャツは?』
ハ:『バスタオルは持って来て、下着はまだある』
AM11:00
リハビリテーションから電話。一12月23日にキャンセルが出たとの事。その日に変更して頂く。予約が早まってうれしい。
PM12:30
スーパーで、ハルに届ける食料を買って、病院に向かう。今日も、いろいろとたくさん買い込む。レジ袋5つ分。
PM3:10
病院到着。院内のコンビニで、ポテトと唐揚げを買う。今日も、受付をして、検温して、許可証をもらって、エレベーターで7階に行く。廊下でハルに『着いた』とラインすると、ハルが来た。荷物を渡すが、ハルが細すぎて、体力もなさそうなので、2回に分けて部屋に持って行かせた。そして、洗濯物と、もう使わない私物を渡されたので、受け取る。
「金曜日までこなくても良い?」と聞くと「うん」との事。一人で売店に行く許可を頂き行ってみた、との事だったので、足りない物は、自分で買いに行けるだろう。それも、リハビリだ。写真を一枚撮って、バイバイする。
PM4:45
帰宅。
ハルの回復が順調の様なので、このまま何事もなければ、予定通り17日に退院できるだろうと思い、18日の夜7時に、ハルが好きな回転寿司に予約を入れる。
明日は学校に、ハルのタブレットや、教科書、今まで配られたプリント類を取りに行く事になっている。そこで、手術の経過報告や、今後の学校生活の事を相談させて頂く予定。
そして、ずっと「どうしようか・・・・」と迷っていた事を、実行しようと思う。それは、学校に「嘆願書」の様な物を出す、という事。
その内容
一、グランドにAEDを設置して欲しい(ハルの学校は、グランドが校内から離れた所にある)
二、教師は、グランドに出る時は、携帯を持参して欲しい
三、学校でのAED教育を推考して欲しい
これは、ハルが回復してきたから言える事で、もし、あのまま死んでしまったり、重い後遺症が残ってしまっていたら、こんな事、考えられないし、実行する余裕はなかっただろう。これも、ハルの命を助けてくださった方々への、お礼の行為だと、私は思っている。ハルの後輩となる方々の為にも。又、多くの学校が、安全の見直しをして下さる事を願う。
12月14日(火)
AM5:30
『おはようスタンプ』送信。
今朝は寒い。雨が降るらしい。雪になるかなあ。
PM12:00
電車が遅延している様なので、少し早めに家を出る。予定通りに学校につきそう・・・・と思いながら、正門の所に行くと、担任と体育の先生(学年主任)が正門で待っていて下さった。子育てしてきて、小学校から今まで、学校という所には何度も足を運んだけれど、先生方が出迎えて下さるなんて、こんな事初めてなので、緊張する。
応接室みたいな部屋に通され、校長先生と、養護の先生も来て、5人で話をする。まず、私が、ハルの様子を話し、携帯でとったハルの近況写真を見せる。担任は、目を潤ませていた。
校長先生は、途中で退席されたので、その際に、昨夜作成した嘆願書もどきを渡した。
養護の先生からは保険の話。ハルが倒れたのは体育の授業中だったので、保険が下りるらしい。その書類と書き方の説明をして頂く。そして、担任と体育の先生とは、今後の学校生活の事などを話す。先生達は、全面的に、協力して下さる感じだったので、安心した。
その後、配布物の説明をして頂き、ハルの荷物を受け取る。中くらいの紙袋に二つ。それと、カラフルな紙袋が一つあった。プレゼントっぽい。「これは、何ですか?」と聞くと、担任が「それは、ハルくんの彼女から預かりました」との事。「えっ? ハルって、彼女いるんですか!?」と、思わず聞き返してしまった。「はい。とても心配していて」と担任が笑顔で言っていた。ずっと緊張していたけれど、心が緩んだ瞬間だった。
応接室に居たのは、全部で40分くらいだった。その後、下駄箱で、ハルの革靴を受け取る。担任と体育の先生が、門の所まで見送って下さった。
ハルが倒れた時から、ずっと懸命に真摯に対応して下さったこのお二人には、感謝の気持ちで一杯だ。先生達には、何の落ち度もないのに、救急搬送された病院の控え室で私は、変わり果てたハルの姿に、思考回路が混乱していて、大人としての対応ができなかった。その事に申し訳なく思っていたので、帰り際に「救急処理室の控え室でお会いした時、冷たい態度をとってしまったかも知れません、すみませんでした」と謝る。
帰りは、雨がやんで、お日様も見えてきた。電車に乗ったら、ハルからラインが来た。
ハ:『学校で誰か生徒と話した?』
私:『特別誰かと話す事はなかったよ。クラスの友達からの寄せ書き預かったよ』
ハ:『わお』
私:『彼女からのお見舞いも』
ハ:『わお』『すごいスタンプ』
私:『彼女いたんだね。心配かけちゃったね』
ハ;『まぁ大丈夫だべ』
照れくさそうな返事だった。
帰宅して、学校から渡されたプリント類に目を通す。ハルが入院している間に、期末テストがあったので、その問題や、解答。休んでいた間の宿題。クラスメイトの方の、ノートのコピーもあった。凄く丁寧に、要点をまとめた、素晴らしいノートで、こんな事までして頂き、有り難い気持ちになった。
それから、寄せ書きも頂いた。担任が「クラスの皆が、ショックを受けるかも知れないと思って、ハル君の病状等は、詳しく伝えていませんでした」とおっしゃっていた。なので、皆さんには、心配をかけてしまっただろうし、何で休んでいるのか、解っていない人もいただろう。私がクラスの皆さんにお礼の言葉や、ハルの体調の経過を書いたFAXも、皆さんには伝わっていなかったって事か・・・・。
ハルのクラスの皆さん、ご心配をおかけしてごめんなさい。暖かいお気持ち、ありがとうございました。
12月15日(水)
AM5:30
起床。『おはようスタンプ』送信。
PM3:00
ハルにライン。
私:『調子はどう?』
ハ:『暇』
私:『あと2日!』『バンガレスタンプ』
私:『明日、運動の前後に、心電図計るんだよね? 結果が良いと良いね。金曜日、何時に退院なのか、ドクターに聞いといて下さい。教えてくれないと、迎えに行けないよ~』
ハ:『はい。金曜日、来るとき、友達からの寄せ書き、持ってきて。車の中で見るから』
12月16日(木)
AM5:30
起床。『おはようスタンプ』送信。
私:『ラスト一日。皆さんに、感謝して、ご挨拶してきてね』
午前中に、買い出しに行く。スーパーを三軒回って、「自転車で持って帰れるか?」と言うくらいの量を買ってしまった。で、肝心の挽肉を買い忘れ、今度は車で一番近いスーパーへ行く。明日ハルが帰宅するので、野菜をたくさん入れた、煮込みハンバーグを作ろうと思っている。とにかく、栄養を付けさせたい。
PM3:40
ハルからライン。『明日10時だって』
PM4:00
I医師から電話。
《内容》
さっき、運動テストをしました。倒れる時ほどの運動はしていないけれど、結構頑張ってもらいました。WPWの反応は出なかったし、問題ないので、明日、予定通り退院できます。
次は、1月23日に外来へ診察に来て下さい。その後は、半年後くらいに市民病院で診察受けて下さい。
普通の生活は出来ますが、水泳はやめておいて下さい。水の中で心肺停止したら、危険だから。
明日の10時に退院となります。
「また、心肺停止したら・・・・とこれから毎日心配です」と言うと、「まあ、たぶん大丈夫ですよ」との事。
「今回の突然の心房細動が起こった原因は、ハルの不摂生やスポーツクラブに行かせた事が起因しているのでは? と心配に思っています」と言うと「医学的に言うと、不摂生は、関係ないと思う。スイミングに行っていた事も関係ないと思う」と言って下さり、安堵した。
その後、病院の会計に電話をして、支払いの手順や場所などを聞く。
ハルにライン。
私:『今、ドクターから電話をもらいました。退院、午前中で良かったね。身の回りの整理、しておいてね。忘れ物ないように。テレビカード、あまっていたら、同室の人にあげたら?』
ハ:『42万笑笑』
私:『何? 42万? もしかして、請求書? 写真送って』
写真が届いた。請求書だった。これ、保険がきいてこの料金???
PM6:30
ハルから、最後の夕食の写真が送られてきた。助六、青菜+もやし+ワカメのお浸し、おでん、あともう一品(蓋がしてあって、見えない)。私なら、嬉しいメニューだけど、ハルが食べられる物は、おいなりさんと海苔巻きのご飯の部分と、おでんの大根くらいかな。
でも、あと一晩ここで過ごしたら、後は、自由の身だ。何でも食べられるよ!
明日は、夫が早朝出勤なので、私は5時起き。その後、ハルを迎えに行くから、運転中に眠くならない様に、早めに就寝しようと思い9時に布団に入って、本を読む。直ぐに睡魔に襲われたが、11時頃、目が覚めてしまった。スマホを見ると、ハルからラインが来ていた。
ハ:『年末におじいちゃんの家に行く?』
もう、友達との、冬休みの予定を立てているんだろうか? 父母も、ハルに会えるのを心待ちにしていると思うので、『その予定です』と返信する。
また、ラインが来た。まだ起きているんだ。
ハ:『いつから、いつまで?』
私:『帰宅してから、決めましょう。おじいちゃん達の都合もあるし』
ハ:『はい』
ハルは、今、どんな気持ちなんだろう。早くここから出たいと思っているんだろうな。手術や、長期の入院生活でも、愚痴や文句も言わず、良く頑張ったなあ~と思う。
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