第20話〜超常と幻影①

…………。


私は王城の至る所に散った暗殺者たちを一人一人確実に仕留めていった。


気配を殺した状態で背後にテレポートしてさくっと。


と言っても意識を刈り取るだけに留めておく。


訓練された暗殺者相手に拷問や尋問はあまり効果はないけど、情報源は一人でも多い方がいい。


私なら死んでても脳さえあれば問題ないけどね。


さすがに証言も証拠もなしにあーだこーだ言っても面倒なだけだから。


この城に侵入した時点で、結界に触れたこの人たちの気配は記憶してある。


だから逃す心配はない。


けど一人、厄介なのがいる。


気を付けてないと私の意識からも外れそうになる手練れ。


うーん、できれば誰にもバレずに静かに終わらせたいんだけど。


暗殺者として、目立つのは御法度だからね。


…………。


「……来たか」


「なんだ、バレてたんだ」


厄介そうな、リーダーっぽい男の人。


テレポートで背後に跳んでも、なんとなくその瞬間に反撃されそうだから気配を殺して近づいたんだけど。


まさか10メートル以上近づけないなんてね。


テレポートは一瞬のラグがあるから、同格以上相手だと隙を晒すだけ。


まぁ初見なら対処される可能性なんて、それこそ万が一だろうけど。


でも万が一でも可能性があるならやめといた方がいい。


可愛い弟妹を悲しませるようなお姉ちゃんにはなりたくないし。


「……この国の暗部か」


「さてね」


侍女兼護衛と言っても通じなそうだね。


最近は着せ替え人形兼抱き枕だけど。


「我らは失敗したようだな」


「うん、君の仲間は全員始末させてもらった、よっと」


厳密には何人か生きてるし、一人ふらふらしてる人も残ってるけど素直に教えてあげる必要はない。


けどそう言えば多少動揺が見れるかと思ったんだけど、言い切る前に私の目に向かって何かが飛んできた。


つや消しされた針かな。


多分毒が塗ってあるし、掠らせないように避ける。


ほんの刹那の差であと数本飛んできたけど、それはナイフで弾く。


この暗闇の中、指先の最小限の動きだけで針を飛ばしてくるなんて、殺意バリバリだね。


針はナイフと違って目に真っ直ぐ飛んでくればただの点だし、ほんの僅かに見えた脳波の揺らぎを感じ取れなかったら対処できなかったかも。


「……うん、手練れだね」


すでに目の前に男の姿はない。


初見殺しの攻撃が通じないと分かった瞬間、逃げに徹した。


こんな幼女相手にも容赦なく急所を狙ってきたし、判断力も冷徹さも暗殺者として申し分ない。


これは…


「少し本気を出さないと逃げられるかも」


ここからはマグダイヤの時間だね。

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