第7話〜超常と女神

非常に暇である。


母アリスティナは何やら忙しいみたいだし、妹弟|(クリスとアル)はお昼寝をしてる。


やらなくちゃいけないことはいくつもあるけど、でもまだこんな小さい私じゃできないことばかり。


日課の訓練は終わってるし、いつもなら私も一緒にお昼寝をするんだけど、なんか今日は眠くならない。


子供とはいえ一応は貴族の娘ならこのくらいの歳でも習い事やお勉強に忙しいはずなんだけど、私の場合実子ではないし、この髪と目のことがあるからね。


最低限の習い事と勉強、あとは裏稼業の訓練しかない。


この家には家政婦さん、この世界ではメイドさんか、はいないから話し相手もいない。


貴族としての本邸にはおっきな屋敷にたくさんの人がいるんだけどね。


……まぁ前世じゃろくに人と話したことなんてなかったし、今だって家族以外と接する機会だってほとんどない。


私は別にコミュ障という訳ではないけど、貴族として生きるのはたぶん無理だろうなぁ。


うーん、正直何かやってないと前世の嫌なことばっか思い出しちゃうんだよなぁ。


「……うーん」


そんなこと考えたせいなのか、なんとなく、この世界に生まれ落ちる少し前のことを思い出してしまった。


研究所で暴走して命を落とし、そして転生するまでの間にあった、あの白い空間での出来事だ。


私はそこで女神様と出会ったんだよね。


…………。

…………。

…………。


気が付いたらどこまでも白くて、広い空間にいた。


最初、研究所の待機室にいるのかと思ったけど、全てが無機質な白に囲まれたあの部屋と違って、柔らかな日差しに包まれたような気持ちになる空間だった。


「あら、珍しいお客さんね」


いつぶりか分からないくらい久しぶりに思考がクリアで、痛みとか何もなくて安心する、そんな状況に戸惑っていたら声をかけられた。


「ここは本来貴方が来れるところじゃないんだけど、迷い込んで来てしまったのね」


とても、とても綺麗な人だと感じた。


けれどなぜが記憶に残らない。


1秒ごとに記憶から抜け落ちるように、彼女の姿が忘れられてしまう。


それでも、綺麗で、神々しくて、その人が特別な存在なのだと直感した。


「ーーーちゃんが見落とすはずないから、貴方は正規のルートからは外れて来たのね。……うん、やっぱり。とても特殊な魂ね。普通、ここに来る過程で少しずつ浄化されて純粋な状態になってるはずなんだけど、貴方の場合は根幹の部分まで刻み込まれてるわね」


この人は何を言ってるのだろう?


意識が曖昧だ。


ボクは…。


何か温かいものがボクの中に入ってきた。


「……とても辛い思いをしてきたのね。全ての生き物を平等にすることはーーー様にだってできないこと、だけど…」


この人の表情などもすぐに忘れてしまうのだけど、けれど彼女がとても悲しんでいることはわかった。


「このまま転生させても、自壊した挙句消滅して、輪廻にも二度と戻れないわね。元の世界に戻してあげたいけど、一度その世界の管理者の手から離れてしまった以上それも駄目ね」


何を言ってるのだろう?


「そうだ。貴方、私の使徒になってみない?」

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