第6話〜ニーナの追憶
転生してから5年、いや、そろそろ6年が経つ。
この世界では、というかこの辺りでは誕生日は毎年祝うものではないらしいし、そんなに細かく日にちを確認することもないからいつの間にか歳をとってるなんてこともある。
だいたい私は拾い子、というか攫われ子?だし。
その年の始めに1年の息災と平和を祈る日があって、その日にみんなまとめて1つ歳をとる、みたいな認識みたい。
それはさておき。
私はこの6年の間に、12人の命を奪った。
つまり私は人殺し。
方法は様々だし、理由もそれぞれあるけど、それでも結果は同じだ。
…………。
初めての殺しは驚く事無かれ、2歳の時だ。
この世界で生まれた時期は1年の終わり頃だから実質1歳と少し。
その時私はとある街の宿で寝ていた。
両親は仕事で、しかし家に1人残しておくこともできない。
まだ一人歩きが覚束ない、そんな幼児。
だからこそ両親は私を仕事先の街まで連れて来た。
仕事を終えて宿の部屋に戻ってきた両親はいつも通り僅かな血の匂いをまとっていて、けれど私の前では仕事の顔は見せずに優しかった。
夜は遅く、幼子を連れて移動するには街は小さく、そして街の外は危険だった。
もっとも前世の記憶を持つ私はその時点で同じ年頃の子供よりは体を動かすことができたし、何より何故か前世同様に使えた超能力があった。
体が幼いからか相応に弱くはあったけど、石ころを飛ばしたり体を短時間浮かべるくらいはできたんだよね。
2人がいない時に試してたってこともあって、あまり練習はできなかったけど。
なので同じ年頃の子供と比べればそれほど危険だったというわけではない。
もっとも両親はそんなこと知らないし、同じ年頃の子供よりはマシなだけで、やはり万が一はある。
…………。
実際その宿に丑三つ時、暗殺者が襲ってきた。
仕事が終わって油断していたのだろう。
僅かに漏れ出た殺気に反応してすぐさま目を覚ました両親。
しかし初動が僅かに遅れた。
窓の外からの不意打ちで父が怪我をした。
手練れの2人を始末するのに手間取り、追加で侵入して来た暗殺者2人が母に分散して襲いかかる。
母は基本的に暗器と毒を使う。
正直正面からの戦闘は専門外だ。
即効性の毒が塗られた暗器が暗殺者たちに刺さるが、即効性とはいえ毒が回るのには僅かに時間がかかる。
そして瞬間的に硬直したところで飛び込んで来た勢いまでは殺せない。
暗殺者のナイフが母の心臓へとまっすぐ突き立てられる。
その一部始終を私はすぐそばで見ていた。
しかし母が傷つくことはなかった。
…………。
ボクは無意識に超能力と、そして転生する際に”神様にもらった”ある能力を使った。
結果男達は全員死んだ。
その死はとても不自然で、怖れられても仕方のないものだった。
けれど両親は暗殺者を一方的に殺した私を怖れるでもなく、異質なものを見るでもなく、無事であることを喜んでくれた。
だから。
私は私の家族のためならばなんだってできる。
その覚悟を持つことができた。
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