第4話〜ニーナ

ニーナ。


暗殺者たちにさらわれた私は、そう名付けられた。


私の名前。


ニーナ=D=マグダイヤ。


記号でも数字でもない、私だけの名前。


両親が付けてくれた名前と、暗殺者一家としての名前、そしてコードネームとしての【D】。


両親は普段私をニーナと呼ぶ。


そして仕事中がはDダモンと呼ぶ。


職業柄、本名は他人にバレるわけにはいかないのだそうだ。


両親に拾われて、というか連れ去られてから5年が経った。


長くてあっという間、そんな5年間だった。


決して¨普通¨ではないけれど、しかし満ち足りた、前世の全てを合わせても密度の足りないほどに濃い¨人生¨。


何もかも失った私が、0から得ることができた。


新しい、初めての、本物の家族。


…………。


「おはよう、ニーナ。朝ごはんできてるわよ」


台所から母の声が聞こえてきた。


彼女の名前はアリスティナ。


【B】のコードネームで、外ではBベルクと呼ばれている。


年はたぶん二十代前半。


童顔で小柄なこの母は成人したての十代に見える。


ちなみにこの国では15歳で成人。


光の加減によっては金色に見える茶髪に黄金色の瞳。


深窓の令嬢然とした見た目と雰囲気だけど、仕事となれば普段とはまるで想像がつかないほどの冷酷さを見せるのを私は知っている。


それでも家族には愛情深い、愛すべき母だ。


「おはよう。クリスとアル起こしてくるね」


クリスティアとラシアル。


双子の妹と弟。


今年で3歳になる、まだまだ手の掛かる本当に可愛い妹弟たち。


あの子達のためなら王族だって暗殺してみせる。


なんて、私もずいぶんと人間らしいことを考えるようになった。


「ありがとね。本当にニーナはいい子だわ」


「ん」


そう言ってアリスティナは優しい手つきで頭を撫でてくれた。


普段目立つため仕事の時に染めることの多い白髪は、正直鬱陶しくて仕方ないけど、彼女が好きだと言ってくれるので大切にしている。


いつまでも撫でていて欲しいが、あまり煩わせてはいけない。


弟妹たちを起こしにいく。


…………。


二人は天使のような寝顔ですやすやと穏やかに眠っていた。


一応姉になるクリスティアは母親であるアリスティナによく似ている。


性格は素直で甘えん坊。


大人しくて、お気に入りは去年あげたクマのぬいぐるみだ。


将来はアリスティナに似た美人になると思う。


末弟のラシアルは父親似。


黒髪に茶色の瞳。


性格はやんちゃで落ち着きがない。


しかし言うことは素直に聞いてくれるし、最近はどこに行くのでも後をついてくる姿がとても可愛い。


2人とも髪や目の色は違うけど、顔立ちは本当にそっくりで、髪を染めたり色付きのコンタクトをすれば見分けがつかなくなりそう。


この2人にはまだコードネームはない。


…………。


父は仕事でいないけど、この4人が私の家族。


やっと手に入れた宝物。


私は彼らのためならば神様だって殺して見せる。


もっとも私をこの世界に転生させてくれた女神様は除いて、だけども

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