混ぜるなキケン!〜魔法と超能力〜
砂上楼閣
第1話〜終わりと始まり
生きる意味を知りたかった。
生きるとは、愛されるとはどういうことなのか。
記憶の彼方、遥か昔にも思える過去の記憶。
まだ自分がただの人であった時の思い出。
両親に捨てられる前に知った¨言葉¨。
日々磨耗していく心は感情を生み出すことを止め、命令に従うだけの自分は動く植物と何ら変わりはなかった。
まだ太陽に向かって伸びて、花を咲かし、実らせる事ができるだけ、植物の方が自由だろうか。
…………。
『217番、投薬の時間だ』
形状も色も違う何錠もの錠剤乗せられた銀色のトレイが、細い隙間のような搬入口から差し込まれてくる。
なぜ飲むのか、そんなことを考える思考など残されてはいない。
錠剤を反射的に口に入れ、飲み込む。
一度に飲み込める量ではないので、何回かに分けて口に運ぶ。
薬を摘む指先も、手首も、腕も、細く青白い。
まるで蝋でできた人形のよう。
飲みこんですぐに霞みがかっていた頭がさらにふわふわとしてきた。
しばらくして、扉が開いて研究者風の男たちが入ってくる。
「1時間後には最終調整に入る。U-9地区に運んで217番を部屋で休ませておけ」
「はい」
ここは表向きは製薬会社の開発施設。
しかし内情は国が秘密裏に開発する兵器などの実験施設。
兵器といってもミサイルや細菌兵器、化学兵器などではなく……。
超能力。
強化人間。
生物兵器。
各地から集められた子供を対象とした、非合法かつ非人道的な実験施設。
ここには買われてきた赤子から、先天的に異能を持っていることがバレて拐われてきた子供まで、実に多くの被験体がいる。
217番もその内の1人だった。
物心つく前に拐われ、毎日が薬剤投与と実験、診察の繰り返し。
それが10年も20年も続き、まだ生きているというのはある意味では成功例の一つではあったのかもしれない。
しかし、さらに数年もした頃…
…………。
…………。
…………。
「ダメです!制御器が破壊されました!」
「ここも長くはもちません!早く脱出を!」
限界は訪れた。
超能力は読んで字のごとく、人としての能力を超えた力。
心が壊され、体を弄くり回され、元々持っていた人間を超えた力を更に超えた力。
それは増築と改築を、繰り返し繰り返し行った巨大建築が崩壊する様のように、辺り一帯を巻き込んで爆発した。
歪に歪を重ねるに重ねた人の業の塊。
醜い花火は大地に咲き乱れ、その他に生きるあらゆる存在を呑み込んだ。
…………。
この日、実験施設を中心とした半径数キロが更地となり、周辺の地形に大きな爪痕を残した。
後世に残る謎多き大事件。
それは時の流れと共に風化していく。
しかし人の業が咲かせた超常の花は実を結んでいた。
超常の力は世界の理すら超え、そして…
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