第9話:大事な話

 というわけで琴音を送り出し、私は家で待機している。

 やると決めたら行動は早い方がいい。

 楓弥にメッセージを送ったらまだ起きていたので、私たち二人から大事な話があると言って、待っていてもらうことにした。


 迷ったけれど、まずはこの状況を作ってくれた琴音に行ってもらうことにした。

 琴音がまず想いを伝え、その結果は言わずに、私を呼んでもらう手筈になっている。

 そして私が楓弥に告白する。


 出来る限りフェアにしたいという思いからこういう順番になったわけだけれど。


 正直、逃げ出したい。

 心臓がバクバクと痛いくらいに打ち続けているし、お腹だって捻じれるようにキリキリと痛んでいる。


 二人がどうなってしまうのか、どうなってしまったのか。

 もしかしたら成就してしまったかもしれない。

 その場合、私が告白する意味って……? とも思うけど、これが私たちなりの決着のつけ方だ。

 甘んじて受け入れるしかない。


 というか、二人ともフラれるパターンだってあるのか。

 やばい、それは考えてなかった。

 そうなったら琴音と傷を舐めあおう。


 何度もそんなことを考えていると、スマホが震えた。

 見るとたった一言。


 ――終わった。


 これだけ、か。

 約束だもんね。

 どうなったか知りたいけど、これから自分で確かめに行くしかない。

 私は意を決して、家を出た。


 ◇◆◆◆◇


 そして訪れた楓弥の部屋。

 私たちは床に座って向かい合う。


「それで話なんだけど」

「お、おう」


 楓弥が身体を強張らせる。

 緊張しているらしい。

 お互いにぎくしゃくしたまま、私は続ける。


「今までひどい態度取り続けてごめん。ずっと昔に言われた『もう着いてくるな』って一言を馬鹿みたいに引きずってただけなんだ。……ごめんなさい」

「それ、俺が言ったんだよな?」

「うん……。小六の頃だけど」

「そっか。なら、俺が悪い。ごめんな、傷つけた」

「ううん、それはもういいの。――また、昔みたいに仲良くしてくれる?」


 楓弥がしっかりと頷いた。


「はぁ~……よかったぁ……」


 憑き物が取れたみたいに、私の身体から力が抜けた。

 たったこれだけのことに、何年もかかったなんて本当馬鹿みたい。

 見ると楓弥も同じように脱力していた。


「俺もほっとした……。琴音から『凛花から大事な話があるみたいよ』って訊いてたから、もしかして絶縁宣言でもされるのかと思ってたからさ」

「そんなこと――」


 しないよ、そう言おうと思ったけど、今までの私の態度を鑑みれば妥当なところだ。

 そう思われても仕方ない。


「話は終わりかな? サンキューな、わざわざ」

「あ……」


 駄目だ、誤解してる。

 私は慌てて大声を出した。


「ちょ、ちょっと待って!」

「ん?」


 楓弥が何? とこちらを見る。

 私は間を開けるように深呼吸する。

 そしてひと息に言った。


「もう一つ、話さなきゃいけないことがあるの。私、楓弥のことがずっと好きだった。だからこれからは幼馴染としてだけじゃなく、恋人になってほしい。――私と、付き合ってください」

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