第35話 踏み出す一歩
「貴方です!貴方は今日から生徒会広報です!」
「「「「えぇっ!」」」」
会長が突然とんでもないことを言い出す。
「わ、私は美術部の予算について話に来たんですが‥‥」
「‥‥あ、ああ。私としたことが取り乱してしまい、申し訳ございません。ですが、美術部の人数は一名、貴方だけです。これ以上予算を上げることは厳しいかと‥‥」
「そ、そうですよね。‥‥でも、そろそろ絵の具が足りなくなってきてしまって‥‥」
「うーむ‥‥‥」
会長が難しい顔で悩み始めた。
まあ、これ以上予算を上げるのは確かに厳しいだろう。
そんな時、会長が何かを閃いたように顔を上げた。
「よし!君が生徒会広報になれば予算を上げましょう!」
「えぇっ!会計の私からしても予算は相当ピンチなんですよ!」
「他の部の予算を削れば問題ないです!」
会長が再びとんでもないことを言い出し、天音が反応する。生徒会会計として、見過ごすわけにはいかなかったのだろう。
「それに、丁度美術部廃部の話も出ていたんです。この条件は、貴方にとっても、美術部の存続に関しても都合がいいでしょう?」
「で、でも‥‥」
「大切なのはやってみる勇気です!」
「わ、私なんかが生徒会役員なんて無理ですぅ〜!」
柊さんが生徒会室を飛び出してしまった。
「俺!追ってきます!」
考えるよりも先に、体が動いていた。
柊さんとはまだあまり仲良くなれてないけれど、なんか放っておけない。
柊さんが居そうな場所は‥‥
◇
「やっぱり、ここに居た」
「せっ、先輩‥‥」
柊さんは美術室に居た。感で行ってみたが、運良く当たったようだ。
柊さんは丁度、絵の下描きをしていた。
「絵、好きなんだ」
「は、はい!絵を描くと心のモヤモヤが消えて‥‥すっきりするんです!」
柊さんが描いている絵は、雲だらけの空に、一筋の光が差し込んでいるような絵だった。
絵についての造形が深くない俺が見ても、美しいと思えるような絵だ。
「こんなに綺麗な絵が描けるなら、生徒会広報、向いてるんじゃない?」
「なんでですか?」
「生徒会広報ってさ、文化祭の時、実行委員長と同時に、ポスターのデザイナーも務めるんだ。柊さんなら、上手く描けるんじゃないかな?」
俺がそう言った途端、柊さんは顔を俯かせた。
「私‥‥小さい頃から人見知りで、引っ込み思案で‥‥。人と関わるのが苦手なんです。そんな私に、生徒会広報が務まる訳がないんです‥‥」
「務まる務まらないの話じゃない。やりたいと思う心が大切なんだ!柊さんは、自分がデザインしたポスター、皆に見てもらいたくない?」
俺の言葉を聞き、柊さんが顔を上げ、表情が不安から希望へと変わった。
「‥‥‥らいたいです。見て、もらいたいです!私の絵を見て、いっぱい褒めて欲しいです!生徒会広報、やりたいです!」
「じゃあ、決まりだ!」
こうして、華斗咲学園生徒会に、新たなメンバー、柊莉実が加わった。
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