第32話 休日の一幕
今日は土曜日だが、俺は制服を来て学校に向かっている。
え?なぜかって?
そ•れ•は!テストで赤点を取って補習になったからでーす!
最近、バイトや生徒会と言った活動で、勉強をする時間が大幅に削られていた。それがテストにも影響して、数学で赤点を取ってしまったのだ。
まあ、天音は相変わらずの高得点なんだけどな。
「てかやばいっ!あと10分で補習始まるっ!」
俺が猛ダッシュしていると、角を曲がる時に人とぶつかってしまった。
‥‥非常に柔らかい感触だ。
「す、すいません。どいてもらっていいですか‥‥?」
「ご、ごめんなさい!」
ぶつかった時、俺がこの人を押し倒してしまったようだ。
目を開けると、そこに整った顔の美少女が不安そうに立っていた。艶やかな髪に、小柄な体、胸を加味しなければスタイルだっていい。生徒会メンバーに勝るとも劣らない美少女がいる。
「ご、ごめんね。急いでたんだ」
「私もっ!ごめんなさい」
お互いに頭を下げ、しーんとした空気になる。
‥‥あれ?よく見たらこの子、うちの学校の制服を着てるな‥‥?
「君‥‥もしかして華斗咲学園の生徒かな?」
「は、はい!一年生です」
「「‥‥‥‥」」
人見知りなのか、俺が質問しなければ固まってしまう。
「‥‥ふ、副会長ですよね‥‥?」
「う、うん!生徒会副会長の、片山唯人!」
「わ、私は柊莉実(ひいらぎりみ)です‥‥。」
「よ、よろしく!」
「は、はい!‥‥こちらこそ」
「「‥‥‥‥」」
互いに言葉を交わさないまま、時間だけが過ぎてゆく。
「俺、今日補習なんだ。柊さんは?」
「わ、私は、美術部の活動に行くところだったんですけど、家に忘れ物をしてしまって‥‥」
「え!?あの美術部に入ってるの!?」
「は、はい‥‥」
うちの学校の美術部は、廃部寸前で部員が殆どいなかった筈だ。ていうか、去年最後の部員が引退して、今年度一人も入部していなかったら廃部になっていたって会長が言ってたな。
「そ、そうなんだ。大変だね」
「‥‥はい。でも、絵を描くのが好きなので」
「そっか!なら自分のしたいことは全力でやるのが一番だよ!」
「あ、ありがとうございます!‥‥というか先輩。補習の時間‥‥大丈夫なんですか?」
「「‥‥‥‥」」
「あ」
まずい。非常にまずい。
「ごめんっ!俺もう行くわっ!」
「は、はい!‥‥また、会えたらいいですね」
「うん!また会おう!」
俺は柊さんに手を振りながら、学校へと全力ダッシュをした。
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