缶蹴りI 『圧倒』
「では第一回戦を始める。‥‥始め!」
不良グループの一人が開始の合図をすると、咄嗟にジョセフらしき人影が木の傍に見えたのでそこを警戒しつつ、缶を触れないように手で覆う。
人影が急に方向転換をしてこちら側に近づいて来た。
俺がより一層警戒を強めると人影が姿を現す。
「なにっ!」
「っ!死ねぇっ!!!」
ジョセフが俺に向かって突進して来た。
「うがっ!!」
バンッ!!
その瞬間、俺と缶は円の外に吹き飛ばされた。
地面に這いつくばる俺にジョセフが近づくと、不意に俺の背中に勢いよく足を乗せた。
「ぐはっ!」
「おめぇみたいな雑魚じゃあ相手にもならねぇ。このままじゃお前死ぬぞ。降参すれば蓮くんはどうなるかしらねぇがお前は助かるぞ」
───確かに。なんで俺がこんなに痛い思いをしてまで蓮の奴を助けなければいけないのだろうか。
───そもそも俺にあいつを助ける義理があるのか。
───悪いのは蓮だ。
そんなことを考えていた矢先だった。
「おい唯人」
蓮が俺に話しかけきた。
「お前なんか俺の親友じゃねぇ。今までこんな雑魚と仲良くしてた俺は馬鹿だな」
その言葉を吐き出した蓮の声は微かに震えていた。
「他人のお前はさっさと家に帰れ」
───違う。
俺と蓮は他人なんかじゃない。
最高で最強の親友同士だ。
俺の唯一の男友達だ。
あいつは‥‥俺が助ける!
「馬鹿なこと言うなよ蓮。お前は、俺の親友だ」
蓮が咄嗟に泣き出した。
「へへっ、強がるのは、俺らしくないかもな」
「そうだ蓮。お前にはその間抜け面が一番似合ってるぞ!」
「やっぱお前に褒められても嬉しくねぇや!」
ジョセフが俺に近づいて来る。
「友情を深めてるところわりぃけど、続けんの?やめんの?」
答えは決まっている。
「やるさ!そして今度は俺が勝つ!!!」
「楽しみだねぇ!てめぇを散々ボコしてから蓮もボコすとするか!!!」
次の戦いは、負ける訳にはいかない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます