2
*
暗闇が仄かに白くなる。それが、まぶたの裏だって気づく。
私は深呼吸した。深く吸ったつもりだけど、空気があまり入らなかった。
それに、なんだか体全体が固くなってる感じがする。重いし、痛い。
それはそうよね。七年も経過してるんだもの。
エルモアに聞いてなかったら、何がなんだか分からなかったところだわ。
ふぅ、と軽く溜め息を吐いて目を開ける。見慣れた天蓋が目に映る。
「あ!」という高い声が聞こえた。
顔を向けると、金髪のエルフの幼女がベッドサイドから私を見ていた。
三歳くらいかしら。見覚えのある顔立ちだけど……。
「ママー! ノイン様が起きたー!」
少女はそう叫びながら、パタパタと駆けて部屋を出て行った。
入れ違いに、エルモアがふわふわと視界に入り込んできた。
(あれはシャンティです。ロディとアリーシャの娘ですよ)
え⁉ 二人に子供が産まれたの⁉ ていうか結婚したの⁉
(はい。ノインさんが寝ている間に、いろいろとあったんですよ。説明を続けたいところですが、忙しくなりそうですね。あとでまたお話しましょう。それでは)
エルモアがにっこりと笑んで、くるりと宙返りしながら消えた。
それから間もなく、多くの足音が響いた。
「ノイン!」
「ノイン様!」
ドアが開け放たれ、知った顔がぞろぞろと部屋に入ってきた。
ルシウスは……今は二十三歳よね。面影はあるけど、もっと背が伸びて逞しくなってる。髪も伸ばしたのね。すごく似合ってる。青くて綺麗。
ロディとアリーシャは、エルフだからかほとんど変わってない。それに元々、大人だったものね。変化に気づけなくても仕方ないかもしれない。
ノルギスお父様は、しわが増えて少し痩せてた。ああ、そっか。もう五十歳を過ぎたんだ。労わってあげなきゃいけないのに、こんなことになっちゃってごめんね。
アデル先生は、口ひげを生やしてた。確か、三十二歳なはず。年齢に見合った威厳を出そうとしてるのかもしれない。でも、そんなのなくても顔も体もがっしりしてるから余計な気がする。後で似合ってないって言おう。ない方が素敵よ、絶対。
「おはよう、みんな」
私は朝の挨拶をしただけなのに、みんな大号泣してしまった。
困ったわ。寝てた期間の実感がないから温度差がすごいのよね。
これはちょっと、後が大変かもしれないわ。
だって、まだアスラたち仲間との顔合わせも控えてるからね。
まぁ、なんにせよ、みんなが元気そうでよかったわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます