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《ねぇ、あなた、私とお話しない?》
《やっぱり話せるのか》
シャドウウルフの光が青に近づく。拍子抜けするくらい簡単に警戒を解いてくれた。なんだか期待が込められた目をしているようにも見える。
青になりきらないのは、おそらくルシウスが気になってるからね。
「ルチウちゅ、武器をしまっちぇ」
「何を言ってるんだノイン⁉ 魔物だよ⁉」
「まもにょも、やちゃちいのが、いりゅんだよ」
私はシャドウウルフに歩み寄る。
《あの子が怯えてるから、撫でさせてもらっていい?》
《ああ、構わん》
シャドウウルフが伏せてくれたので、私は頭を撫でる。
そこでゾワッとした。
《ちょっと、なんかねっとりしてるんだけど⁉ あ、くさーい!》
《興味深い臭いだわ。こんなに強い異臭を感じたのは初めてだわ》
《すまんな。しばらく水浴びしてないから》
皮脂汚れってことね。先に言ってほしかったわ。
ルシウスに視線を向けると、呆然としていた。
「ルチウちゅ、くちゃいけど、こわくにゃいよ」
「ノイン、君は一体……」
「そりぇは、あちょで。武器をちまっちぇ。そちたら、こっちにきちぇ」
ルシウスは戸惑ったように視線を動かした。だけど、すぐに諦めがついたみたいで、溜め息を吐いて短剣を鞘に収めてくれた。
「僕も、そっちに行って大丈夫なんだね?」
私は一応シャドウウルフに伝え、問題がないことを確認してから頷いた。
ルシウスがおずおずと歩み寄ってくる。固唾を飲んで、すごくゆっくり。
そりゃ怖いわよね。こんな大きな狼だもの。
私は話せるから平気だけど、そうじゃなかったら、こんなこと怖ろしくてできないわ。悲鳴を上げて、きれいなフォームで全力疾走してたでしょうね。
やっぱり、勇気があるわ。ルシウス。素敵。
うっとりしながらルシウスを待っていると、シャドウウルフが話しかけてきた。
《なぁ、頼みがあるんだが、聞いてくれないか?》
《頼み? そうね。内容を聞いてからね。でもまず、体を洗わせてほしいわ》
シャドウウルフが目を輝かせる。
《本当か。それが頼みの一つだ。ありがたい》
《一つって、まだあるの?》
《ああ、奥に仲間がいるんだが、怪我をしていてな、助けてもらえんかと》
仲間が大変ってわけね。それは手伝ってあげないと。
私は気落ちした様子のシャドウウルフに案内をお願いした。
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