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 エルモアは、私がどうしてこういった状況に置かれているのかを話し始めた。

 まず、私は死んだらしい。そして異世界転生を果たしたのだとか。


 死んだことは受け入れるけど、どうして異世界に転生したの?


(神が言うには、地球にはいさせられないそうです。理由は、あなたの名前です)


 名前?


(ミタラシ・ダンゴなら良かったんですけどね。神は団子好きなものですから、あなたの名前が団子を冒涜していると怒り狂いまして)


 そんな理由で私の命は消されたのか。

 神様が団子好きなばっかりに。


 というか、それ、私に責任なくない?


 私は幼少期から名前で笑い者にされてきた。

 病院でだって、呼び出されるときに必ず失笑が起きた。

 名前で良い思いをしたことなんて一度だってない。


 確かに、しょっぱいのか甘いのかハッキリしない名前よ。

 でも、そんなことを気にしたって、どうなるものでもないじゃない。

 だから受け入れて生きてきたのだけどもさ。


(まさか、神に殺された挙げ句に追放までされるとは夢にも思いませんよね……)


 そうね……。親を恨めば良いのか、神様を恨めば良いのか……。


(両方でいいと思います。では、説明に戻ります)


 私は小国ガーランディア王国の第二子として生を受けたらしい。腹違いの兄がいたそうだけど、魔族の先祖返りだったとかで、王妃共々追放されてしまったとのことだ。


 ということは、王女?


(そういうことなんですが、実はこの国、そろそろ危ないです)


 隣国のアラドスタッド帝国が、五年後に戦争を仕掛けてくる予定だそうだ。

 エルモアが言うには、ほぼ国家存続の望みはないらしい。それまでに、この国を自力で脱出しなければ、私は転生して早々、また死んでしまう可能性が高いのだとか。


(飽くまで予定ですから、状況次第では早まるかもしれません)


 ちょっと待ってよ! どうして、そんな場所に転生させた訳⁉


(タイミングとしか言えませんね)


 人だと、本来、死産になる予定だったこの国の王女を器にするのが最も生存率が高かったのだという。他は、農奴や貧民街の娼婦の子しかいなかったらしい。


 人じゃない場合は魔物になっていたとのこと。


 もふもふしてたなら、そっちでも良かったんだけど。


(そうでしたか。かなり環境的には過酷ですが、もしそちらがよろしいなら今からでも変更しましょうか? 寝ている間に処理するので、苦しみなく済ませられますけど)


 うーん、どうしよう。過酷って、どの程度?


(周囲はすべて敵です。ずっと命を狙われますね)


 ごめん、やめとく。即死だわ。


(ギフトを与えるので、即死することはないとは思いますけど)


 エルモアが私の額に手を当てた。

 視界が仄かに光り、眉間がムズムズした。


(地球のクピドと神に代わって、僕からのプレゼントです。アンコさん、いえ、今のあなた、ノイン・ガーランディア王女の生きる力になってくれるはずです)

 

 これは……。


 教えられた訳でもないのに、与えられた力の使い方が分かった。

 そして、エルモアの正体が、この惑星自身であることも。


(そろそろ、お別れです。僕の上で暮らすあなたに、幸多からんことを)


 。そう言い残し、エルモアは笑顔で姿を消した。

 両手を広げ、まるで私を歓迎してくれているようだった。

 

 ありがとう。、ね。期待してるわ。エルモア。

 

 

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